
寄付をめぐり禁錮13年の判決
ロシアの軍事裁判所は、ウクライナの募金活動に暗号資産を送ったとして、IT専門家ユーリー・ベレンキー氏に禁錮13年を言い渡しました。
判決は、刑務所で3年を過ごした後、厳格な管理下にある矯正施設で10年服役する内容です。ベレンキー氏は起訴内容を否認しており、弁護側は控訴する方針です。
ロシア側は寄付先にウクライナ軍とアゾフ大隊が含まれていたとして、資金供与を「テロリズム」と結び付けました。同国はアゾフをテロ組織に指定しています。
取引履歴と利用者情報が捜査資料に
ロシア当局はバイナンスにベレンキー氏の取引履歴を求め、同社は送金先のウォレットへの暗号資産移転を示す情報を返したと報じられています。その記録は刑事事件の証拠として使われました。
ベレンキー氏が送金を始めた利用者だとする確認情報のほか、生年月日、住所、電話番号、旅券番号、旅券とブルガリアの居住許可証の写しが捜査書類に含まれていたと報じられています。
暗号資産の取引記録はブロックチェーン上に残ります。欧州刑事警察機構(Europol)は、ビットコインなどの取引は追跡可能であり、取引所は利用者や取引に関する情報を集める規制を受けるようになったと説明しています。
取引所が記録と本人情報を結び付ける仕組み
ブロックチェーンは、複数のコンピューターが同じ取引台帳を共有する仕組みです。公開型の台帳では取引履歴を確認できますが、記録上の送金元が誰なのかは、取引記録だけではすぐに分からない場合があります。
取引所は、利用者の口座情報と、その口座を通じて行われた取引の記録を扱います。米国では、対象となる暗号資産事業者に顧客確認や取引監視、疑わしい取引の報告が求められます。
ベレンキー氏の事件では、取引所の記録が個人情報とともに捜査当局へ渡り、送金者の特定に結び付いたと報じられました。暗号資産で寄付をしても、取引所を通じた送金履歴と口座情報が捜査で扱われる場合があります。
EUの個人データ保護をめぐる論点
ブルガリアの居住許可を持つベレンキー氏の情報がロシア当局へ渡ったことで、EU一般データ保護規則(GDPR)との関係が問われています。GDPRが適用されるかは、当時の居住状況や、口座情報を管理していたバイナンスの法人などに左右されます。
GDPRの適用対象となる場合、個人データの利用や開示には適法な根拠が必要です。EU域外への移転にも条件があり、ロシアにはEUの十分性認定がないため、適切な保護措置や例外規定が関係します。
暗号資産規制を専門とする弁護士は、EU居住者の情報をロシアへ渡すことにGDPR上の問題が生じ得ると指摘しています。一方、バイナンス側は個別案件や機密の捜査要請についてコメントしていません。
寄付の訴追と控訴
ロシアでは、ウクライナ関連団体への寄付が反逆罪やテロ資金供与に関する訴追につながる事例が報じられています。人権団体ファースト・デパートメントは、2025年に反逆罪やスパイ活動の罪で起訴された事件の約10%が、ウクライナの団体への寄付に関係したとしています。
ベレンキー氏はブルガリアの居住許可を持ち、昨年9月にモスクワを訪れた際に拘束されました。ロシア側の主張では、寄付は2022年8月から2024年3月に行われ、送金先は亡命中のジャーナリスト、アルカディ・バブチェンコ氏が案内したものでした。
弁護側は、裁判で提示されたデータが本当にバイナンスから提供されたものかを疑問視しました。










