
グリア氷帽で12万8千年以上前の氷を確認
チベット北西部のグリア高原で採取された氷床コアを調べた研究から、氷の記録が12万8千年以上前まで遡る可能性が示されました。この結果は、地域で確認されていた氷河記録を10万年以上延ばすもので、極域以外の山岳氷床として、これほど古い記録を持つ例は限られます。
研究チームは、1992年と2015年に採取されたコアを比較しました。採取年が23年離れた2つのコアには、過去の環境を推定する手がかりとなる酸素同位体のパターンが共通して見られました。
従来の研究では、グリア氷帽の記録は約1万2千年前に始まった完新世の中頃までと考えられていました。今回の年代推定は、その一部に完新世より大幅に古い氷が含まれることを示しています。
放射性同位体と地磁気イベントで年代を推定
氷の年代を測るため、研究チームはベリリウムと塩素の放射性同位体を使いました。放射性同位体は時間とともに一定の規則で減少するため、その量は年代推定の手がかりになります。
研究チームは、4万1千年以上前に起きたラシャン地磁気エクスカーションの痕跡も調べました。これは地球の磁場が大きく乱れた出来事で、氷に残った特徴的な化学的痕跡を年代の目印として利用しました。
関連する年代測定法の研究では、塩素36とベリリウム10の比率を使う方法が検討されています。この比率は、それぞれの同位体の生成量を左右する要因の変化を受けにくく、氷の年代推定に利用できます。ただし、塩素36が失われたり、ベリリウム10が深い氷の中で移動したりする場合があり、そうした影響を理解する必要があります。
氷床コアが記録する過去の環境
氷床コアは、雪が積もって圧縮される過程で取り込まれた化学成分などを保存します。層ごとの情報を調べることで、氷が形成された時代の気候や環境を復元する手がかりが得られます。
各層がいつ形成されたかを正しく推定できなければ、記録の解釈は難しくなります。グリア氷帽では年代の不確かさが過去の解釈を難しくしていました。今回の研究では、同じ氷床コアの酸素同位体記録と年代指標を照合し、より長い時間軸が示されました。
研究を主導したロニー・トンプソン氏は、チベットに完新世の氷しか残っていなければ、最終氷期の大規模な氷が初期完新世まで残らなかったことになると述べています。今回の結果は、少なくとも一部の氷がそれより古いことを示しています。
今後は別の気候指標も調査
グリア氷帽の高い標高と周囲の地形は、古い氷が残った理由に関係している可能性があります。研究チームは、より正確な年代軸を使うことで、氷河の拡大や後退がいつ起きたかを調べる手がかりが得られるとしています。
今後は追加の氷試料を調べ、気候や環境を示す別の指標が長い時間軸の中でどう変化するかを分析する予定です。追加分析により、従来とは異なる解釈が得られる可能性もあります。
研究には米国国立科学財団の支援があり、米国、中国、スイスなどの研究機関に所属する研究者が参加しました。研究成果は学術誌『Science Advances』に掲載されました。











