Elon Musk at a Press Conference
写真: Daniel Oberhaus / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

マスク氏が語った「将来の貯蓄は無意味」

イーロン・マスク氏は、超知能の発達によって豊かさが広がるため、遠い将来に向けた貯蓄は意味を失うとの見方を示しました。退職後の資金を準備する必要性にも疑問を呈し、AIとロボットが経済や通貨のあり方を変えると予測しています。

マスク氏は、SNS上の投稿に対し「超知能による豊かさの到来を前に、遠い将来のために貯蓄するのは無意味だ」と返信しました。また、ピーター・ディアマンディス氏のポッドキャストでも、10年後や20年後の退職に備えて資金を貯めることは重要でなくなるとの考えを述べています。

マスク氏は、貯蓄についての見解とともに、AIが将来の生産や経済の規模を大きく変えると予測しています。米国の公的債務についても、支出削減ではなくAIとロボットが解決策になるとの考えを語りました。

AIとロボットが債務を解決するという見通し

マスク氏は、ウォルター・アイザックソン氏のポッドキャストで、政府支出を削って債務を減らす方法は「不可能」だとし、AIとロボットが債務問題を解決する唯一の方法だとの結論に至ったと述べました。この考えに至った経緯として、2025年に政府効率化局(DOGE)で約130日間、特別政府職員を務めた経験を挙げています。

マスク氏の推計では、デジタル超知能によって商品やサービスの世界的な生産量が20〜30%増えれば、世界経済に年間約30兆ドル(約4,700兆円)が加わる可能性があります。

さらに、ロボットを活用し、宇宙へ進出して月面に物資を運ぶ装置を実現できれば、地球経済の最大100万倍の規模に達する可能性にも言及しました。マスク氏は、そうした豊かさの先では通貨が残っても、ワット数や質量、エネルギーなどの物理量を基準に測られ、従来型の通貨は重要でなくなると予測しています。

将来の経済予測と貯蓄の助言

同氏が示した生産量の増加率や経済規模は予測です。

同氏は、政府の赤字削減に取り組むと反対する人が増えるとして、米大統領や議会、司法に支出を抑える意欲が乏しいとも述べました。米国の公的債務は2026年8月に40兆ドル(約6,300兆円)に達し、その後も増加したと報じられています。

DOGEでの経験について、マスク氏は活動に「夢中になりすぎた」と振り返り、もっと早く離れてAIに注力すべきだったと語りました。政府支出の削減を目指した経験と、AIを債務解決の手段とみなす現在の考えが、同じインタビューの中で結び付けられています。

退職資金をめぐる制度上のリスク

米国の職場で使われる退職制度には、給付額があらかじめ決まる確定給付型年金と、個人の口座に積み立てる確定拠出型制度があります。確定給付型では運用結果が給付額に足りない場合、雇用主が差額を補います。これに対し、401(k)などの確定拠出型では、退職時の口座残高が金融市場の運用成績に左右されます。

米国では確定拠出型制度の利用が広がる一方、確定給付型年金を提供する企業は減ってきました。確定拠出型制度は企業にとって管理が比較的簡単で、拠出額を給与ごとに固定できることが、普及した理由の一つです。

制度の移行に伴い、運用成績が想定を下回ったときのリスクは、雇用主から従業員へ移ります。確定給付型年金の減少は複数の産業で見られ、ボーイングや自動車メーカーの労使交渉では、年金の復活や確定拠出型制度への雇用主拠出の増額が議題になりました。