
ロシアはAppleとMicrosoftを、情報流通の運営者を登録する国家監視リストに加えました。両社には、ロシア国内の利用者のテキスト、動画、音声メッセージを最長3年間、国内サーバーに保存し、要請に応じて治安機関へ提供する義務が生じます。iCloudではバックアップの設定によってメッセージの暗号化方式が異なるため、登録は保存義務だけでなく、暗号鍵の管理主体にも関わります。
ロシアの登録で生じる保存・提供義務
AppleとMicrosoftは2026年10月2日、ロシアの「情報流通の運営者」登録簿に加えられました。登録簿を運営するのは、ロシアの国家メディア監督機関ロスコムナゾールです。
登録対象には、ロシア国内の利用者の通信を最長3年間保存し、国内サーバーに置くことが求められます。ロシアの法律に基づき、治安機関から要請があれば、データを提供する義務もあります。
この登録簿にはWhatsAppやTelegramなどのサービスも含まれています。Appleが加わったことで、同社のサービスも通信の保存と当局への提供を求められる制度の対象になりました。
iCloudバックアップの設定で暗号化が変わる
iCloudバックアップには、端末の設定やアプリデータに加え、メッセージの内容が含まれる場合があります。標準のデータ保護では、バックアップの暗号鍵をAppleのデータセンターで保管し、Appleが復元を支援できる仕組みです。
「メッセージ in iCloud」は、iCloudバックアップがオフの場合、標準のデータ保護でもエンドツーエンド暗号化されます。エンドツーエンド暗号化では、利用者の信頼済み端末だけが復号鍵を持ちます。
一方、標準のデータ保護でiCloudバックアップを有効にすると、バックアップには「メッセージ in iCloud」の暗号鍵のコピーが含まれます。この設計では、Appleが鍵を使って利用者のメッセージ復元を支援できます。
高度なデータ保護では鍵を端末側で管理
オプション機能の「高度なデータ保護」を有効にすると、iCloudバックアップとその中身がエンドツーエンド暗号化されます。バックアップに含まれる「メッセージ in iCloud」の暗号鍵も暗号化されます。
この設定では、利用者の信頼済み端末が暗号鍵を保持し、Appleはエンドツーエンド暗号化されたデータを復号できません。Appleによると、高度なデータ保護を有効にした後でアカウントにアクセスできなくなった場合、復旧には端末のパスコードやパスワード、復旧用連絡先または復旧キーが必要です。
ロシアの保存・提供義務の対象と、Appleが暗号鍵を使って内容を読めるかどうかは別の論点です。iCloudバックアップの有無と高度なデータ保護の設定によって、メッセージ関連のデータを復号できる主体が変わります。
Appleのロシア事業とこれまでの対応
ロシアは2022年、iCloudのデータを国内サーバーに保存していないとしてAppleに罰金を科しました。同年、Appleはロシア国内に事務所を設ける法的要件を受け、モスクワに事務所を開設しています。
Appleはロシアに直営店を持たず、2022年に同国でのオンライン販売を停止しました。一方、端末は第三者の販売店を通じて流通し、サービスは2026年初めまでロシアの利用者向けに提供されていました。
FaceTimeは2025年にロシアでブロックされました。AppleとMicrosoftは、新たな登録要件について公にコメントしていませんでした。










