フロリダ大学ワートハイム・UFスクリップス研究所の研究チームが、土壌細菌から抗マラリア候補化合物「SPA」を見つけました。培養した血液と肝細胞で、多剤耐性の熱帯熱マラリア原虫を99.9%除去したとされます。原虫の生活環の複数段階に作用する候補として研究が進められています。
土壌細菌から見つかったSPA
SPAは、希少な土壌細菌群「Sphaerisporangium」が作る化合物です。研究チームは細菌を培養して生産条件を整え、化学構造を調べたうえで「sphaeriaurantins」の略称を付けました。
試験で最も有望だったSPAは、薬剤耐性を持つ熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を、培養した血液と肝細胞から99.9%除去しました。血液と肝細胞の両方で効果が見られたことから、研究チームは、SPAが原虫の生活環の複数段階に作用したと説明しています。
試験結果は、SPAに対する薬剤耐性が生じにくい可能性も示しました。候補化合物から承認薬に至るまでには長い年月がかかるため、研究チームは今後、薬理学的・治療上の可能性を調べる方針です。
12万株超の微生物コレクションを探索
研究の出発点は、研究所が保管する12万2,550株の微生物コレクションの一部です。研究チームはまず、そこから選んだ精製済み天然化合物81種類を、重症化を引き起こす薬剤耐性マラリア原虫に対して試しました。
この段階で、5つの化学群にまたがる6候補が見つかりました。続いて、放線菌と呼ばれる細菌群から作った1,531サンプルを調べ、その約20%に抗マラリア作用があることを確認しました。
研究チームは、人に有害な候補を除き、化学組成と作用を詳しく調べました。その過程で未研究の化合物を見つけ、産生する細菌を培養してSPAの構造と生産を調査しました。
既存薬の作用と耐性の仕組み
既存薬の作用はそれぞれ異なります。クロロキンなどのキノリン系薬は、原虫がヘモグロビンを分解して生じるヘムを、結晶状のヘモゾインへ変える過程を妨げます。毒性のある遊離ヘムが原虫内に蓄積することも、作用の一部と考えられています。
アルテミシニン系薬は原虫内でヘムによって活性化され、ヘムやタンパク質など複数の分子に損傷を与えます。研究では、タンパク質の損傷に加えて、損傷タンパク質の分解を担うプロテアソームの機能低下も、原虫を死滅させる仕組みに関わると報告されています。
アルテミシニンへの部分耐性は、治療後に原虫が遅れて消える現象として捉えられ、K13というタンパク質の変異と関連します。変異した原虫では、初期の輪状体段階で一部が薬剤の影響を生き延びます。また、ヘモグロビンの取り込みや分解が減り、薬剤によるストレスへの応答も変化します。
今後は作用標的の特定が焦点
研究チームは次に、SPAの主な分子標的を特定・検証し、作用機序を明らかにする計画です。現在の試験結果が示すのは培養した血液と肝細胞での作用であり、治療薬としての可能性は今後、薬理学的・治療上の評価で調べます。
研究チームは、研究所の天然物探索センターにある微生物、抽出物、部分精製サンプルを調べています。このコレクションは77カ国に由来し、複数の製薬会社や研究グループが薬の候補として集めたものです。
コレクションは80年以上にわたって蓄積されました。研究所は、世界の研究者が天然物を探せるよう、微生物のゲノムデータベースを構築しています。











