
抗生物質の有効成分を中国からの輸入に頼る欧州で、Sandozのリチャード・セイナーCEOが、域内生産を維持するため薬の調達価格を見直すよう求めています。EUのペニシリン系抗生物質とその誘導体の輸入に占める中国の割合は、2019年の44%から昨年は86%に増えました。
欧州の抗生物質生産を支える工場
スイスの製薬会社Sandozは、オーストリアのクンドルに、抗生物質の有効成分を作り、患者向けの薬に仕上げる工場を持っています。投資額は1億5,000万ユーロ(約260億円)(1億6,800万ドル(約260億円))で、欧州で原薬から製剤までを一貫生産できる唯一の施設です。
抗生物質の有効成分は、医薬品有効成分(API)と呼ばれます。FDAはAPI製造を、原料の受け入れから生産、包装、表示、品質管理、出荷判定、保管、流通までの一連の工程として扱っています。
APIの品質と純度を保つため、品質管理の仕組みが設けられています。ペニシリンの製造では、ペニシリウム属のカビを発酵槽で培養し、生成物をカビから分離して精製します。
価格と供給網を巡るSandozの主張
Sandozは5月、アモキシシリンに使う有効成分の中国からの輸入について、欧州委員会にアンチダンピング調査を申し立てました。同社は、中国メーカーへの補助金などが競争条件をゆがめ、価格を押し下げていると主張しています。
セイナーCEOは、安価な輸入品との競争が欧州の生産基盤を弱めると懸念し、公平な競争条件を整える政策を求めました。EUの重要医薬品法は、抗生物質や鎮痛薬などの入手可能性と欧州内の生産の改善を目指しています。セイナーCEOは、政府が調達価格の引き上げに応じるかが課題だと述べています。
英国の国民保健サービス(NHS)が支払うアモキシシリン250ミリグラムのカプセル21個入りの価格は、1.06ポンド(約220円)(1.41ドル(約220円))です。セイナーCEOは、抗生物質の価格が低く抑えられている一方、医薬品の開発と市場投入には大きな費用がかかるとして、価格だけでなく医薬品の価値も考慮すべきだと訴えました。
米国メーカーが提起する調達策
米国のアモキシシリンメーカーUSAntibioticsのパトリック・キャッシュマン社長は、2025年の議会証言で、国内の抗生物質供給を維持するには長期の購入契約が必要だと提案しました。病院、薬局チェーン、流通業者などの購入者が価格を優先すると、メーカーは設備投資や人材確保を長期計画に基づいて進めにくいと説明しています。
同社は2021年に操業を再開しました。キャッシュマン社長は、米国市場の約5%に供給している一方、国内需要の全量を満たせる生産能力があると証言しました。同氏は、政府調達でも最低価格だけでなく供給の安定性を考慮するよう求めています。
2026年の証言で、USAntibioticsは自社を米国内でアモキシシリンを製造する唯一のメーカーと説明し、原薬から患者向け製剤までを生産していると述べました。同証言でキャッシュマン社長は、半導体や重要鉱物の供給網を強化する政策と並べ、医薬品の供給網も政策課題として扱うよう求めています。
Sandozが掲げるバイオシミラー拡大
Sandozは後発医薬品とバイオシミラーを手掛けています。後発医薬品は特許が切れた医薬品で、バイオシミラーは生物由来の医薬品に対応する製品です。後発医薬品は世界で使われる医薬品の80%を占めます。
同社は2040年までにバイオシミラーを100製品超に増やす目標を掲げており、現在の13製品から約8倍となります。セイナーCEOは、この拡大によって医療制度の費用削減などを通じた社会的効果が生まれると見積もっています。
Sandozは、今後10年間に合計6,500億ドル(約100兆円)相当の医薬品の特許が切れると推計しています。











