海底火山で8.7秒の正味発電、Endurance Energyが次段階へ
出典: enduranceenergy.com

海底火山で8.7秒間、消費を上回る発電

米シアトルのEndurance Energyは、オレゴン州沖約500キロの海底火山「Axial Seamount」で地熱発電設備「Adélie」を試験し、消費電力を上回る電力を8.7秒間生み出しました。正味出力は中央値で約2キロワット、最大16.5キロワットでした。この試験では、長時間の供給ではなく、発電量が設備の消費量を超えるかを確認しました。

Adélieは定格出力100キロワットの試験設備で、今回の正味発電量はその規模を大きく下回ります。設備は海底に設置され、陸上のシアトルから海底光ファイバー網を通じて遠隔操作されました。同社は3週間の展開中に、海底での掘削、設備の設置、熱から電力への変換、陸上からの制御を一連の試験として実施しました。

掘削した井戸から熱水を得ましたが、流量が設備の運転に足りませんでした。そこで近くの自然噴出口につなぎ、約281度の熱水で発電を試みました。しかし、ソフトウェアの問題で設備が停止し、再起動時には冷媒ポンプに電力を送るケーブルも故障しました。Endurance Energyのアンドリュー・レッドCEOは、次の設備では井戸を深くして流量を増やし、電力機器と海底ケーブルを改良する考えを示しています。

熱水からタービンを回す仕組み

Adélieでは、熱水の熱を熱交換器で作動流体へ伝え、その流体でタービンを回します。熱交換器は熱水と作動流体の間で熱を移す装置で、タービンは流体の力を回転運動に変える機械です。地熱発電のバイナリー方式では、水より沸点の低い別の流体を熱で蒸発させ、その蒸気でタービンを回します。

地熱流体が約150度以下の場合、熱水や蒸気を直接タービンに使わず、別の媒体に熱を移す方式があります。九州電力と川崎重工業が鹿児島県の山川発電所で始めた実証設備も、地熱熱水を熱源に、代替フロンを作動流体として使うバイナリー方式でした。この設備の定格出力は250キロワットで、熱回収やスケール、腐食への対策などを検証しました。

海底では周囲の海水による冷却や水圧を利用できますが、設備の長期運転には課題があります。Project Innerspaceの研究担当副社長ダニ・メリノガルシア氏は、高温で酸性度の高い熱水が熱交換器などの腐食や鉱物の付着を招く可能性を指摘しました。故障時に海底設備を回収・修理する作業は高リスクで費用もかかるため、耐久性が商用化の課題になります。

商用地熱発電所と試験設備の規模

Adélieの定格出力100キロワットは0.1メガワットです。アイスランドのヘリシェイディ地熱発電所は設備容量303メガワットで、発電ユニットを7基備えています。同発電所は2006年に商業運転を始めました。

カリフォルニア州のNorth Brawley地熱発電所は50メガワットのバイナリー発電所として記録されています。同発電所は2010年に運転を開始しました。同地域では1980年に10メガワットの実験発電所が稼働し、5年間運用されました。

Adélieは発電所ではなく、海底で熱源を捉えて発電する工程を確かめる試験機です。Endurance Energyは、次に試すGentooで出力の向上と継続的な発電を目指しています。

Gentoo試験とトンガの商用計画

Endurance Energyは今冬、Adélieを改修した「Gentoo」を海底に展開する予定です。改良内容には、より頑丈な電気機器、再設計したケーブル、より深い井戸が含まれます。同社の現在の掘削機は最大約80メートルまで掘削でき、Adélieの井戸の深さ16メートルから拡張を図ります。

同社は並行して、出力2メガワットの商用発電機「Leopard」を開発しています。最初の商用プロジェクトはトンガで計画され、2027年の初送電を目標にしています。同社は、輸入ディーゼル燃料への依存が大きい地域で、地熱を継続的な電力源として活用する構想を示しています。

試験中、Endurance Energyは自主的な環境モニタリングも実施し、作業前後の採水や海底生物の映像記録を行いました。同社によると、モニタリングでは海底生物群集や自然の熱水活動に大きな変化はなく、異常な地震・火山活動も確認されませんでした。水、岩石、鉱物の40点を超える試料は、分析のため独立した研究機関に送られています。