
湾岸の原油輸出は戦前の水準まで回復したとKplerが報告しました。一方、輸送経路は変化し、ホルムズ海峡を通らずに原油を運ぶパイプラインの役割が増しています。米軍の展開が続くなか、船舶への攻撃に加えて石油生産設備への攻撃も懸念されています。

輸出量は回復しても輸送コストは高止まり
Kplerは、9月の湾岸産原油輸出が少なくとも日量1,650万バレルに達し、戦前の水準まで回復したとしています。別の調査会社による推計には差がありますが、輸出の回復が複数の市場関係者から報告されています。
輸送経路には変化がありました。Kplerによると、現在は原油の約40%がホルムズ海峡を通らずに輸出されており、戦前の約17%から増えています。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)がパイプライン経由の輸送を増やしたほか、8月に海峡を通過した原油のうち70%超は洋上で別のタンカーへ積み替えられたといいます。
ただし、輸出量の回復は輸送の正常化を意味しません。米軍は船舶を護衛していますが、湾岸では商船への攻撃が増え、ドローンやミサイルが船舶に到達する場合もあります。タンカーの航行は続く一方、輸送と保険の費用は高く、原油価格や軽油などの燃料価格にも影響が残っています。
サウジとUAEのパイプラインが海峡を迂回
ホルムズ海峡を迂回する主な経路の一つが、サウジアラビアの東西パイプラインです。東部のアブカイクから紅海沿岸のヤンブーまで約1,200キロにわたり、原油を運びます。設備容量は日量700万バレルですが、9月末時点の推定輸送量は日量約265万バレルで、攻撃後の復旧が続いていました。
UAEのADCOP(ハブシャン・フジャイラ原油パイプライン)は、内陸のハブシャンからオマーン湾沿岸のフジャイラへ原油を運びます。設備容量は日量150万バレルで、推定では設備容量に達する水準で稼働していました。両国のパイプラインの設備容量を合わせると日量850万バレルです。これは輸送能力の上限であり、常時その量を運べることを示す数字ではありません。
迂回路には限界もあります。東西パイプラインの輸送量は、9月末時点で攻撃前の水準を下回っていました。ヤンブーから出る原油は、アジアへ向かう場合に紅海南端のバブ・エル・マンデブ海峡を通るため、別の海域の混乱が輸送に影響する可能性もあります。パイプラインはホルムズ海峡の代替経路になりますが、海上輸送のリスクをなくすものではありません。
船舶だけでなく生産設備もリスクに
ホルムズ海峡を通る輸送が減っても、湾岸のエネルギー供給全体が安全になるわけではありません。Bourse & Bazaar Foundationのエスファンディヤール・バトマンゲリッジCEOは、イランには海峡以外にも採掘・精製設備を攻撃する手段が残っていると指摘しました。イランによる輸出が事実上止まるなか、米国は海上封鎖を維持し、制裁も強化しています。
過去にも、海峡以外の石油施設が攻撃を受けました。2019年にはサウジアラビアの東西パイプラインのポンプ施設や、アブカイクの原油処理施設、フライス油田が攻撃対象となりました。S&P Global Commodity Insightsは、アブカイク攻撃後にサウジアラビアが予備のパイプ網を使ってヤンブー向けの輸送を維持したと報じています。原油の輸送経路を複数持つことは、海峡の通航が妨げられた場合の緩衝になりますが、生産・処理設備への攻撃による影響まで防げるわけではありません。
米国は空母「セオドア・ルーズベルト」と、強襲揚陸艦3隻および第13海兵遠征部隊で構成する部隊を中東へ派遣しています。トランプ大統領はイランとの交渉再開に向けた提案を退け、米中間選挙後にイランへの爆撃を再開する考えを示したと報じられています。バトマンゲリッジ氏は、原油の流れを維持できても湾岸地域全体の安全を保証することは難しく、状況が長引けばイランが生産設備への攻撃に踏み切る可能性があると警告しました。







