
火星南部高地にある古い岩丘を、NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」のカメラ「HiRISE」が撮影しました。色を強調した画像では岩石が青や緑、黄、赤に分かれて見え、鉱物の違いや、過去に液体の水と接触した可能性を調べる手がかりになります。
色の違いが岩石の成分を示す
撮影対象は火星南部高地の古い岩丘です。HiRISEの観測識別番号はESP_093841_1480で、撮影日は2026年8月3日です。
公開されたカラー画像は、火星の地表を人の目で見たときの色をそのまま再現したものではありません。色の差を強調し、見た目では区別しにくい岩石の違いを捉えやすくしています。
青や緑に見える岩石は、輝石やかんらん石を多く含む未変質の岩石である可能性があります。黄、オレンジ、赤の部分は、水との過去の相互作用で変化した鉱物に由来する可能性があります。
HiRISEは複数の波長帯を色に割り当てる
HiRISEのカラー画像は、赤色、青緑色、近赤外線の波長帯を使って作られます。通常の写真のように赤・緑・青の可視光だけを組み合わせるのではなく、近赤外線などの情報も色として表示するため、画像上の色は見た目の色とは異なります。
HiRISEはMROの移動に合わせて地表の細い帯を順に撮影する「プッシュブルーム方式」のカメラです。可視光の赤色用CCDを10個備え、中央部分には青緑色と近赤外線の情報を加えるCCDが4個配置されています。
カラー情報が得られるのは画像中央の帯状部分で、典型的な画像では全幅の約20%です。カラー表示では近赤外線を赤、赤色を緑、青緑色を青に割り当てます。各色の明暗や組み合わせが、鉱物を見分ける手がかりになります。
色による鉱物推定と分光観測の違い
HiRISEは地表の細かな地形を撮影しますが、色チャンネルは3つです。赤色の広帯域フィルターは約690ナノメートル、青緑色は約500ナノメートル、近赤外線は約870ナノメートルの波長に対応します。
一方、MROの分光計CRISMは、画素ごとに多くの波長帯のスペクトルを取得し、鉱物に対応する吸収の特徴を調べます。CRISMのデータは可視光から赤外線までを含み、HiRISEの3色画像より多くの波長情報を使って組成を分析します。
HiRISEの高解像度画像は、CRISMなどが捉えた鉱物の分布を、より細かな地形と結び付けて調べるのに役立ちます。研究では、HiRISEの色チャンネルで鉱物や相をどこまで区別できるかが検討され、他の稼働中の多波長カメラとの共同分析も論じられています。
色の解釈には観測範囲と処理の制約がある
HiRISEのカラー画像は中央の限られた範囲を覆い、観測範囲も近年さらに狭くなっています。また、公開される画像製品の一部は、明暗を整える処理によって極端な値が切り詰められ、定量的なスペクトル分析に適さない場合があります。
未加工のデータ製品は、表面物質のスペクトル特性を調べるうえで役立つ場合があります。大気の状態や照明条件の変化による影響を抑えるため、研究ではバンド比やスペクトル指標も検討されています。
CRISMはより多くの波長情報で組成を調べられますが、HiRISEの画像が持つ細かな空間情報とは役割が異なります。CRISMの長波長側検出器は2018年に失われ、装置は2022年に運用を終了しました。HiRISEの色観測は、高解像度での表面調査に使えるデータの一つです。










