火炎を熱源にした透明な試作機

ベン・クラスノウ氏は、アインシュタイン・シラード方式の吸収式冷蔵庫を透明樹脂で3Dプリントし、火炎を熱源にして動かしました。試作機は周囲より5度低い温度まで冷却しました。電気や可動部を使わず、熱で冷却サイクルを動かす仕組みを内部まで見える形で示しています。

吸収式冷蔵庫は熱を使って冷媒を循環させます。一般的なアンモニア・水方式では、アンモニアを室温で液化するため、ガラスや樹脂の容器で扱うには高い圧力が必要です。アインシュタイン・シラード方式は第三の液体を加え、冷却の仕組みを変えています。

冷媒には通常ブタンが使われますが、今回の試作では開放火炎を使うため、燃えないパーフルオロペンタンを選びました。本体は透明な樹脂製で、銅ブロックを介して火炎の熱をボイラー室へ伝えます。アンモニア水溶液は銅を溶かすため、銅部品は長期使用向けではなく、実演用の構成です。

第三の液体を使う冷却サイクル

水、アンモニア、ブタンを作動流体にするアインシュタイン・シラード冷蔵庫は、可動部がなく、一定圧力のもとで熱源だけを使って動く吸収式冷蔵庫です。方式の要点は、アンモニアと水に加えて冷媒を使い、アンモニアの分圧を下げて冷媒の蒸発を促すことです。これにより、アンモニア・水だけを使う方式とは異なるサイクルになります。

サイクルでは、アンモニアを含む水溶液を沸騰させ、アンモニアガスを分離します。アンモニアガスが冷媒の分圧を下げると、冷媒が蒸発して周囲から熱を奪います。その後、冷媒とアンモニアの蒸気が水と混ざります。アンモニアは水に溶け、冷媒は凝縮して、再び循環を始めます。

アンモニアを含む水溶液はボイラーへ戻り、サイクルを繰り返します。今回の構成では装置内部の経路が一本で、各部の圧力差がほとんどないため、気泡が適切でない位置に入ると流れが止まるエアロックが課題になりました。クラスノウ氏は調整を重ね、周囲より5度低い温度に達するまで動作させました。

冷蔵庫の漏れを避ける発想

アインシュタインとシラードが冷蔵庫の研究を始めた背景には、当時、冷蔵庫のポンプから漏れた有毒ガスでベルリンの家族が死亡したという報道がありました。当時使われていた冷媒には塩化メチル、アンモニア、二酸化硫黄があり、いずれも有毒でした。二人は、可動部の軸受けやシールからの漏れが機械式装置に伴う問題だと考え、機械的な動きを使わない冷却方法を探りました。

二人は1926年に冷蔵技術の改良に取り組み、吸収式、拡散式、電磁式という異なる原理の設計を検討しました。シラードは同年から特許出願を始め、二人は有望な設計を三つに絞りました。アインシュタイン・シラード方式は、可動部のない冷蔵庫を目指した複数の設計の一つです。

アインシュタインとシラードはこの冷蔵庫を共同で発明し、米国では1930年11月11日に特許を取得しました。その設計は、熱源で作動し、一定圧力で動く三流体の吸収式冷蔵庫です。今回の試作機は当時の設計原理を実演し、火炎の熱で冷却サイクルを動かしました。

試作機で見えた実用上の制約

吸収式冷蔵庫は可動部を持たず、廃熱だけを熱源として運転できるため、キャンピングカーや工場設備などで使われています。今回の装置では、圧力差が小さい一本の経路で気泡が流れを止めることが、動作上の難点でした。可視化された樹脂本体と銅ブロックを使った構成は、サイクルの実演向けです。

今回の冷却には開放火炎と、通常の冷媒ブタンに代わる不燃性のパーフルオロペンタンが使われています。銅ブロックは熱をボイラー室へ運びますが、アンモニア水溶液との相性から長期間の使用には向きません。

クラスノウ氏は、十分に高濃度のアルコールなら、その一部を燃やして飲み物を冷やせると述べています。これは冷媒の蒸発に必要な熱を火炎で供給する仕組みに沿った説明です。