磁石の距離から筋肉の動きを測る
MITの研究チームは、筋肉に埋め込んだ小さな磁石の動きを外部センサーで追跡し、筋肉の長さや動く速さを測る手法を、下腿切断者3人で検証しました。皮膚表面の電極で筋肉の電気活動を測る従来法に比べ、筋肉の機械的な動きを直接捉えられる可能性があります。
この手法は磁気筋計測(magnetomicrometry)と呼ばれます。直径3ミリの磁石を筋肉に埋め込み、筋肉が縮んだり伸びたりしたときの磁石間の距離変化を、皮膚上のセンサーで読み取ります。
参加者の足首の筋肉には最大4カ所に磁石が埋め込まれ、信号を皮膚から最大6センチの深さまで読み取るセンサーが使われました。磁石は金とポリマーのパリレンCで覆われています。
AMIが義肢の動きと感覚をつなぐ
参加者はいずれも、切断時に筋肉の対をつなぎ直す「agonist-antagonist myoneural interface(AMI)」を受けていました。片方の筋肉が縮むと、対になる筋肉が伸びる関係を保ち、義肢の関節の動きに関する感覚フィードバックに役立てる仕組みです。
固有受容感覚とは、体の部位の位置や動く速さ、力のかかり方を、目で見ずに感じる感覚です。AMIでは、筋肉の伸縮に伴う情報が神経を通じて脳へ伝わり、関節の動きを感じる手がかりになります。
AMIを介して脳から義肢へ動作指令を送り、義肢の関節位置や動きに関する感覚情報を神経系へ戻す構想があります。2018年の人を対象とした報告では、膝下切断者1人にAMIと義肢を組み合わせ、従来の切断を受けた人々との比較で、義肢の動きの制御や動作効率に関する結果を示しました。
表面筋電図との違いと今回の実験
表面筋電図は、皮膚に貼った電極で筋肉の電気活動を測り、その信号から筋肉の動きを推定します。筋肉を一定の長さに保つと信号が弱まることや、汗や隣接する筋肉の信号が測定に影響することが課題です。
磁気筋計測は、電気活動ではなく磁石間の距離から筋肉の長さや速度を求めます。Cameron Taylorは2021年の説明で、磁石を無線で追跡し、筋肉が動いてから約0.001秒の遅れで長さを測れると述べました。また、表面電極の位置や汗によって筋電図の測定値が変化しうる点を、制御上の課題として説明しています。
動物を使った別の測定では、磁気筋計測は筋肉の長さを1ミリ秒未満で算出し、X線を使う蛍光筋計測との測定差は平均1ミリ未満でした。蛍光筋計測が10秒間の測定に限られる一方、磁気方式では連続的にデータを集められるとTaylorは説明しています。
人を対象とした今回の実験では、参加者は義肢を装着せず、筋肉を動かして画面上のカーソルを目標へ移す課題に取り組みました。研究チームは磁石、筋肉内電極、皮膚表面の電極による信号を比較し、磁石を使う方式はより正確で安定した制御につながる可能性があると評価しました。
埋め込み磁石の安全性と次の検証
磁石を体内で使うには、位置がずれないか、磁力が弱まらないか、MRI検査に影響しないかも検討が必要です。2025年のブタ1頭を使った研究では、筋肉に埋め込んだ磁石を0.55テスラと1.5テスラのMRIにさらし、MRI後の移動は観察されませんでした。
磁力の最大減少率は0.55テスラで2.1%、1.5テスラで13.5%でした。画像上の最大アーチファクトは両方の磁場強度で71ミリと報告され、研究者らは1.5テスラまでのMRI検査に適合する可能性があると結論づけました。
1995年の試験管内試験では、ネオジム・鉄・ホウ素磁石を細胞に接触させて調べ、パリレンで覆った磁石を含む複数条件で細胞毒性が確認されました。パリレン被覆後に消磁した磁石では、試験したヒト口腔粘膜の細胞に対して毒性が見られました。
研究チームは3人の参加者で磁気計測の精度を評価し、義肢を使った制御をより大規模な研究で検証しています。











