
米国では薬物過量摂取による死亡が2023年のピーク後に減少し、2024年は前年から27%減りました。減少の背景には単一の政策ではなく、薬物供給の変化、使用者の行動変化、公衆衛生上の介入が重なった可能性があります。 ただし死亡者はなお多く、減少が続くかどうかは治療や予防を支える取り組みにも左右されます。
2023年のピーク後に死亡率が低下
米国の薬物過量摂取死亡は、新型コロナウイルス流行期に増えた後、2023年夏を境に減少へ転じました。Nabarun Dasgupta氏の報告では、2023年8月に年換算で11万2,418人だった死亡数は、2026年4月までの12カ月では推計6万6,937人となり、ピークから40.5%減りました。
同報告が示す年齢調整死亡率は、2022年に人口10万人当たり32.3、2023年に31.1でピークとなり、2026年4月までの年換算値は19.5でした。 年齢調整死亡率は、人口の年齢構成の違いをならして時期ごとの死亡リスクを比べる指標です。
STAT Newsが紹介した専門家の見解では、死亡の減少は複数の州で新型コロナ流行期に始まり、その後も続いています。Dasgupta氏は、供給される薬物の変化、使用者の行動、公衆衛生やハームリダクションの介入を、減少に関わった可能性のある要因として挙げています。
薬物供給と使用者の変化
薬物供給の変化は、過量摂取リスクの変化につながりうる要因として報告書で検討されています。使用者側の行動変化も、同じく死亡減少の仮説に含まれています。
ただし、これらの要因がどれほど死亡減少に寄与したかは、単一の割合で示されていません。死亡数の推移に複数の要因が重なるため、特定の政策や変化だけを減少の原因とする見方には、専門家から異論が出ています。
STAT Newsは、専門家の間で「国境閉鎖」が死亡減少に寄与したとは考えられていないと伝えています。 一方で、供給の変化や使用者の行動がどう影響したかを理解することは、今後の予防策を考える際の論点になっています。
ナロキソンや治療へのアクセス
米疾病対策センター(CDC)は、ナロキソンの広範な配布、薬物使用障害の治療へのアクセス改善、違法薬物供給の変化、パンデミックで中断した予防・対応の再開などを、死亡減少に寄与した複数の要因として挙げています。 ナロキソンは過量摂取を反転させる救命薬です。
CDCの地域向けプログラム「Overdose Data to Action」は、49州と41の地域保健当局に資金を提供し、死亡・非致死性の過量摂取データの収集や活用を支援しています。 地域当局は検査で薬物供給の変化を捉え、予防活動を実施する地域や時期を検討します。
CDCは、データを使ったナロキソン配布や治療の拡充に加え、地域の公衆衛生機関と治安機関の連携も挙げています。 STAT Newsが紹介した専門家は、保険を維持するための事務負担が、薬物使用が不安定な時期にある人の治療継続を難しくする可能性を指摘し、メディケイドの削減が進展を逆転させる懸念を示しました。
2025年は合成オピオイド関連の減少が中心
米保健福祉省の計画評価担当部局(ASPE)は、2024年から2025年にかけての年齢調整死亡率の低下を、2024年と2025年で人口推計の方法をそろえて分析しました。その結果、全死因の死亡率は人口10万人当たり14.1低下し、約2%の減少となりました。
この全死因の低下のうち、意図しない負傷による死亡の減少が約30%を占めました。その負傷死亡の低下の73%は、意図しない薬物過量摂取の減少によるものでした。
意図しない過量摂取の減少では、フェンタニルなどを含む合成オピオイド関連の死亡が大きな割合を占めています。同区分の死亡数は2024年の4万5,917人から2025年の3万6,406人へ減り、約20.7%低下しました。 ASPEの分析は、死亡減少の内訳を示す一方、その変化を特定の政策だけに帰属させるものではありません。










