
米国務省は2026年9月17日、サウジアラビアにF-35A戦闘機48機を売却する総額243億ドルの計画を承認しました。一方、米下院のラジャ・クリシュナムルティ議員は、中国への機密技術流出を懸念し、売却に反対しています。中東向けの兵器輸出では、イスラエルの軍事的優位を損なわないことも米国に求められます。
売却案は48機と整備・訓練支援を含む
F-35Aは、ロッキード・マーティンが製造する多用途ステルス戦闘機F-35の一型式です。売却案には機体48機に加え、プラット・アンド・ホイットニー製F135-PW-100エンジン49基、支援機材、予備部品、技術支援、訓練が含まれます。
今回の承認は、売却の完了や実戦配備を意味するものではありません。売却が成立し、納入が想定どおり進めば、2030年代前半から半ばに運用を開始する可能性があります。実現した場合、サウジアラビアはF-35を選定または運用している20カ国に加わります。
サウジアラビアは、すでに米国製戦闘機を導入してきました。オバマ政権期に成立した294億ドルの兵器売却には、F-15SA戦闘機84機、既存のF-15戦闘機70機の改修、弾薬や整備・訓練支援などが含まれていました。サウジアラビア空軍の戦闘機部隊の主力は、F-15の各型です。
中国系通信インフラをめぐる機密保護の懸念
クリシュナムルティ議員は、米下院情報特別委員会の有力メンバーで、売却案が公表された9月17日に反対を表明しました。同議員は、米情報機関が技術流出の危険を警告しているとして、中国共産党が内部技術に接触できる可能性のある場所にF-35を売却すべきではないと主張しています。
サウジアラビアでは、Huaweiが2023年にリヤドでクラウド施設を開設し、政府サービスや人工知能の機能を支えています。中国電信も2024年、政府機関向けに5G通信、クラウド、人工知能を提供する事業を始めました。
中国の国家情報法第14条は、情報活動を合法的に行う機関が、関係する組織や市民に必要な支援・協力を求められると定めています。ただし、同議員の反対理由は技術流出の危険への警告であり、サウジアラビア向けF-35から情報が流出したという出来事ではありません。
F-35の情報管理は機体と地上の整備システムにまたがる
F-35には、整備や補給を支える情報システムALISがあります。ALISは整備データを、操縦士や整備員、軍の指揮官が運用判断に使える情報へ変換します。
ALISでは、飛行中に機体のセンサーが記録したデータを、帰投後に携帯型記憶装置や読み取り用のノートパソコンを介して地上側へ移します。地上のサーバーは機密情報と非機密情報を分けて処理し、各国の窓口となるサーバーを経由して、米国にある中央サーバーへデータを送る構成です。ソフトウェア更新も、この仕組みを通じて利用側に配布されます。
扱う情報は整備・補給だけでなく、任務計画や飛行後の検討に使う飛行経路、識別した脅威などにも及びます。後継のODINは、クラウドを前提とした設計に、統合データ環境と利用者向けアプリケーション群を組み合わせる計画です。ODINは管理者や整備員の作業負担を減らし、ソフトウェア更新を迅速に開発・配布できるようにすることを目標としています。
UAEでもHuaweiの5GがF-35交渉の争点に
中国系通信設備とF-35の機密保護は、過去のアラブ首長国連邦(UAE)向け売却交渉でも問題となりました。UAEは2019年、Huaweiによる5Gインフラ整備と数百基の基地局建設に合意しています。
米当局者は、F-35の基地や運用区域の近くにHuaweiが管理する密集した5G網があると、受け入れ国が知らないうちに機体や運用者の追跡や情報収集に利用される可能性があると警告しました。UAEは交渉の停滞について、技術的要件や主権に関わる運用上の制限を理由に挙げています。ワシントン研究所は、中国との関係を米側の懸念の一つとして分析しています。
サウジアラビア向け売却でも適用される制度上の条件が、イスラエルの「質的軍事優位性」です。これは米国が他の中東諸国に兵器を売る際、イスラエルの軍事的優位を損なわないよう保証する原則で、2008年に改正武器輸出管理法へ明文化されました。米国防総省は、中東向けの武器輸出を承認する際、この優位性を損なわないことを確認する義務を負います。
イエメン向け武器輸送では米海軍が押収を実施
サウジアラビアの周辺では、イエメンの武装勢力への武器輸送も安全保障上の問題となっています。米移民・税関捜査局(ICE)は、米海軍が2021年5月から2023年1月にかけて、オマーン湾とアラビア海周辺の海上警備で武器を押収したと説明しています。
押収品には、小銃9,000丁超、機関銃284丁、ロケット発射器約194基、対戦車誘導ミサイル70発超、弾薬70万発超が含まれます。ICEによると、捜査対象の船舶はイラン革命防衛隊からイエメンの武装勢力へ向かう途中で、押収は2021年の2回と2023年の2回、計4回の無国籍船への臨検によるものでした。より大規模な密輸網に関する没収手続き上の主張については、ICEは疑惑の段階としています。








