Saipan Tinian aerial map
写真: http://www.terraprints.com / CC BY 2.5 / Wikimedia Commons

戦時の滑走路を再整備

北マリアナ諸島テニアン島の北飛行場で、米空軍などが第二次世界大戦期の滑走路や関連施設を再整備しています。米軍は恒久的な駐留基地ではなく、グアムのアンダーセン空軍基地を補完する緊急時の代替拠点と位置付けています。滑走路を複数の拠点に分散させる運用構想の一環で、固定基地への攻撃に備えます。

北飛行場は、かつてB-29爆撃機が使用した飛行場です。戦後に使われなくなり、熱帯の植生に覆われていましたが、米空軍のRED HORSE部隊、海軍のシービー、海兵隊の技術者らが滑走路や誘導路、駐機場の修復に携わっています。複数の軍種が参加し、米軍は滑走路の運用能力を回復させる作業を進めています。

米空軍は2026年度から3会計年度にわたる3段階の投資として、約13億3,000万ドル(約2,100億円)を充てる計画です。滑走路の再舗装に加え、駐機場や燃料設備なども整備しています。既存の滑走路配置を生かし、飛行場全体を新設せず、戦時中の施設跡を再利用しています。

グアムを補う分散運用

北飛行場はグアムから北へ約161キロの位置にあり、再整備後の滑走路は約2,987メートルです。アンダーセン基地の滑走路が攻撃などで使えなくなった場合、航空機がテニアンへ移動する代替先として想定されています。複数拠点での運用は、米空軍の「アジャイル・コンバット・エンプロイメント(ACE)」構想に沿うものです。

ACEは、少数の大規模基地に航空機や物資を集中させず、拠点を分散して運用する考え方です。米空軍は、分散拠点で運用を続けるため、燃料や戦時予備物資、航空機支援資材を事前に配置する必要性を挙げています。遠隔地でも連絡を保つ通信手段や、複数地点から補給を続ける体制も整える方針です。

分散した拠点には、共同部隊による防御や施設の強化、隠蔽も必要です。北飛行場では陸軍や海兵隊の部隊を含む演習が行われ、2026年の演習では約250人の共同部隊要員が活動しました。こうした施設や訓練は、拠点を短期間使う場合にも、補給・通信・防御を組み合わせて運用する課題に関わります。

DF-26が示すグアム防衛の課題

中国のDF-26は、道路を移動して運用できる中距離弾道ミサイルです。通常弾頭と核弾頭の双方を搭載でき、米中経済安全保障調査委員会の2016年報告は、通常型ミサイルの射程がグアムに及ぶとしています。DF-26は、通常弾頭でグアムを攻撃できる中国初の弾道ミサイルです。

米中経済安全保障調査委員会の報告は、当時のDF-26には精度の限界や発射母体の脆弱性があり、グアムへの脅威は比較的低いと評価しました。一方、中国が攻撃能力の近代化を続ければリスクは高まるとの見通しも示しています。同報告は、グアムへの攻撃が米軍の地域対応を遅らせる可能性を指摘し、地域内の基地を分散させることを対応策の一つに挙げました。

北飛行場の再整備は、グアムに集中する航空運用を複数地点へ広げる取り組みの一部です。滑走路を使える状態にするだけでは分散運用は成立せず、燃料や物資、通信、共同部隊による防御なども必要です。米空軍は、複数の運用拠点と補給経路を確保し、攻撃を受けても作戦を続けられる基地網を整える方針です。

島の復旧と地域との連携

北飛行場の工事では滑走路だけでなく、島内の道路も整備されています。2025年の作業では、北飛行場へ通じるイースト・アクセス・ロードとブロードウェイ・ロードの損傷が大きい区間を舗装しました。これらの道路は、建設作業や軍関係者の日常移動に加え、牧場主や住民の移動にも使われます。

2026年4月、台風シンラクがテニアン島を襲い、島では電力、水道、通信が途絶え、道路や住宅にも被害が出ました。第356遠征戦域支援群は地元当局や海軍シービーと協力し、北飛行場へ続く主要道路の障害物を除去して救援物資の通行を確保しました。同部隊は、被災後に飛行場の再整備作業を通常の運用に戻したとしています。

復旧作業では、米軍と地元当局が協力しました。第356遠征戦域支援群の隊員は、海岸の清掃や地元事業者の片付けを支援し、連邦緊急事態管理庁や赤十字の救援活動にも協力しました。