超音波で確認しながら神経を周囲組織から離す
手根管症候群の患者63人を対象にした無作為化比較試験で、超音波ガイド下のハイドロディセクションを受けたグループは、ステロイド注射のみのグループより、痛みやしびれ、手の機能の改善が長く続きました。この処置は平均約15分で、手首の正中神経の周囲に生理食塩水を注入し、神経と周辺組織を分ける方法です。
手根管症候群は、前腕から手に伸びる正中神経が、手首の狭い通路で圧迫されて起きます。痛み、しびれ、ピリピリする感覚、手の力の低下などが現れることがあります。ハイドロディセクションでは、医師が超音波画像で神経の位置を見ながら針を進め、液体を注入します。
試験に参加したのは、一般的な治療を受けても症状が続いていた患者です。63人は、生理食塩水によるハイドロディセクション、生理食塩水とステロイドを併用するハイドロディセクション、ハイドロディセクションを伴わないステロイド注射の3群に分けられました。痛みや症状の重さ、手の機能を治療前後に評価し、正中神経の断面積も超音波で測定しました。
改善はステロイド注射のみの群で再発
治療から4週間後には、3群すべてで症状が改善しました。その後、12週と24週の評価では、ハイドロディセクションを受けた2群で症状と手の機能の改善が続きました。一方、ステロイド注射のみの群では、初期の改善後に症状が再発しました。
神経の断面積は、ハイドロディセクションを受けた2群で約43〜45%縮小しました。ステロイド注射のみの群では、縮小は約15%でした。症状の評価と超音波測定の両方で、3群の経過に違いが見られました。
生理食塩水にステロイドを加えても、6カ月までの長期的な改善に統計的に有意な上乗せ効果はありませんでした。生理食塩水だけを使う方法でも、ステロイドを併用した方法と同程度の経過が示されました。処置は全般に良好に受け入れられ、研究者は直後と追跡期間中に重大な合併症を確認しませんでした。
先行研究は有効性を示す一方、比較課題を残す
2024年の系統的レビューでは、手根管症候群への超音波ガイド下ハイドロディセクションを扱った研究を整理し、神経周囲の癒着を機械的に分けて神経の圧迫を軽減する方法として説明しています。レビューは、症状や痛みの改善が報告され、この方法は有効で忍容性が高く、安全性も示唆されたと結論づけています。923人のうち11人に処置後の副作用が報告されました。
レビューでは、対象者数を増やした研究と注入物質を比較する研究が今後必要とされています。2023年の別の系統的レビューとメタ分析では、超音波ガイド下の神経周囲注射を含む介入研究60件を検討し、うち20件の比較試験などを6つのメタ分析に含めました。このレビューでは、超音波ガイド下のステロイド注射は目印だけを頼りに行う注射より良好な結果を示し、ステロイド量が多い注射も少ない注射を上回りました。
同じレビューでは、5%ブドウ糖液による注射が対照注射より良好で、注入量の多い方法も少ない方法より良好でした。対象となった超音波ガイド下介入の研究では、重篤な有害事象は報告されていません。ただし、注入物質や処置方法が異なる研究を横断した結果で、生理食塩水だけを用いる今回の試験と同じ条件を比較したものではありません。
6カ月以降の持続性を追加研究で調べる
今回の試験で追跡された期間は6カ月で、参加者は63人でした。研究者は、複数の医療機関でより多くの患者を対象にし、さらに長く経過を追う研究が必要だとしています。その結果によって、今回観察された改善がどれほど長く続くか、患者間でどの程度一貫するかを評価できます。
研究チームは、生理食塩水とブドウ糖液など、ハイドロディセクションに用いる液体を比較する別の研究も始めています。この試験では、液体の種類によって改善の持続性に違いがあるかを調べる計画です。今回の結果は、手術を遅らせたり避けたりする選択肢となる可能性を示しました。











