
米陸軍は、送電網が停止しても重要設備を稼働させられるよう、米国内の基地へマイクロリアクター(輸送可能な小型原子炉)を導入する計画です。マイクロリアクターは月面や深宇宙の電源としても開発されていますが、実用化には出力や安全性の実証が必要です。
米国内の基地で導入と実証を計画
陸軍の「Project Janus」は、米本土48州の基地に2030年代初頭までにマイクロリアクター20基を導入する計画です。8月に発表された助成額は合計22億ドル(約3,400億円)でした。発電の対象は基地全体ではなく、送電網が止まっても稼働を維持すべき重要設備です。
陸軍はAntares、Radiant、General Atomicsなどと導入に取り組んでいます。Antaresは6月、試験用のMark-0で核反応の持続に成功し、1メガワットのR1を2028年9月までにノースカロライナ州のフォートブラッグへ設置する目標を掲げています。
国防総省は9月、宇宙船に組み込むR1-Sの開発と飛行認証に向け、Antaresに1億6,100万ドル(約250億円)を授与しました。同社のジョーダン・ブランブルCEOは、早ければ2030年の月面設置を目指すとしています。
燃料輸送を減らす利点と設置の課題
基地のディーゼル発電機には、燃料補給のため輸送車両が繰り返し向かいます。Radiantのトリ・シバナンダン社長兼COOは、同社の1メガワット炉は3年間、補給なしで運転できると述べました。また、従来の発電機は1〜2日ごとに補給が必要だと説明しました。
マイクロリアクターは、遠隔地や孤立した場所へ電力を届けるための小型システムです。ディーゼル発電機に代わり、現地で長期間運転する用途が想定されています。工場で組み立ててトラックなどで運び、年単位で燃料補給せずに運転する設計も開発されています。
輸送しやすくても、戦闘地域で運用できるとは限りません。General Atomicsのクリスティーナ・バック副社長は、設置と撤去に何日もかかるため、戦闘地域への持ち込みは現実的でないとの見方を示しました。陸軍も現時点では紛争地域への導入を計画しておらず、まず米国内で安全性と費用面を確かめる方針です。
小型化を支える設計
マイクロリアクターは工場で組み立て、完成品を運転場所へ輸送する設計です。現地で大規模な建設を行わずに済むため、遠隔地への設置が想定されています。
設計によっては、トラック、船、鉄道、航空機での輸送を想定しています。また、反応を自動調整する仕組みや受動的な安全システムを取り入れ、過熱を防ぎ、現地で必要な専門運転員を減らすことを目指しています。
出力や冷却方式は計画ごとに異なります。General AtomicsのGA-TESは、必要に応じて5〜20メガワットへ拡張する構想で、空冷方式を採用し、燃料補給の間隔を4〜6年としています。同社は1メガワット級では基地の電力需要に足りないと主張する一方、Radiantは輸送のしやすさを重視しています。
実用化には出力と安全性の実証が必要
陸軍のエネルギー担当幹部ジェフ・ワクスマン氏は、低出力で短時間運転することと、定格出力で運転することは別だと指摘しました。マイクロリアクターには、定格出力での運転実績がまだありません。陸軍はまず、基地で安全かつ手頃な費用で稼働できるかを確かめる考えです。
Project Janusへの資金投入には、初期導入費用を抑え、商用展開につなげる狙いがあります。ワクスマン氏は、基地で実績を積み重ねた後、北極圏や太平洋の島々など、より厳しい環境への導入条件を検討すると述べました。
月面では太陽光発電や放射性同位体電源が短期的な候補とされ、核分裂炉は長期的な電源として構想されています。基地向けの実証と宇宙用炉の開発は並行していますが、いずれも導入時期は計画段階です。











