
月面で記録された色と光
NASAのアルテミスII乗組員は、2026年4月6日の月周回飛行中に、灰色や黒だけでなく、褐色、黄褐色、緑色、青色などの色合いを記録しました。乗組員は写真や映像、音声、手書きの注釈を残し、NASAはこれらを予備的な月科学報告として公開しています。
月面の色の違いは、岩石や鉱物を見分ける手がかりになります。NASAは、青色をチタンに富む火山岩、褐色を鉄の含有量の違い、緑色を古い火山噴火や小惑星衝突でできたガラスに結びつけています。
乗組員のクリスティーナ・コック飛行士は、アリスタルコス台地の黄色を「月の黄疸の頬」のようだと表現しました。ビクター・グローバー飛行士は、同じ地域に緑や褐色が見え、北へ続く褐色の筋があると述べています。
火山ガラスが示す組成の違い
月の火山ガラスは、火山噴火で放出された物質が固まってできた小さな粒です。アポロ計画で持ち帰られた試料には、緑色やオレンジ色のガラス粒が含まれており、色は粒に含まれる二酸化チタンの量に応じて変化します。
Nature Communicationsに掲載された研究は、アポロ17号の試料74220を分析し、チタン量の違いに伴ってガラス粒の色が緑、黄、オレンジ、赤、黒へ変わると報告しています。この研究では、ガラス粒だけでなく、かんらん石に含まれる融解物や粒の一部も調べ、揮発性成分の量を比較しました。
その比較から研究チームは、ガラス粒の成分変化を噴火中の脱ガスだけでは説明できず、月面での長期にわたる冷却と脱ガスが必要だと結論づけました。研究が扱ったのは過去のアポロ試料であり、アルテミスII乗組員が見た個々の色の成分を直接分析した結果ではありません。
オリエンタレ盆地の色と地形
乗組員は、月の表側と裏側にまたがるオリエンタレ盆地でも、灰色、褐色、黄褐色、緑色を観察しました。盆地の最外リングには「沼地のような色」が見えたとコック飛行士が述べ、グローバー飛行士は山稜の端に白い部分があると記録しています。
オリエンタレ盆地は、複数の同心円状のリングを持つ月面の衝突盆地です。NASAによると、約38億年前に形成され、最大のリングは東西約950キロメートルに及びます。
NASAは、巨大な衝突で地表が跳ね返り、噴出物が戻ってくる過程が盆地のリング形成に関わったと説明しています。
目視記録と月周回カメラの補完
NASAは、乗組員が画像を撮影するだけでなく、目視した景色を連続して解釈し、周囲の状況と結びつけた点を科学上の価値として挙げています。乗組員は月面の色や明るさを記録し、その認識を月周回機の観測データと比較できる形で残しました。
月周回機「ルナー・リコネサンス・オービター」のカメラは、月面を高解像度かつ複数の色で撮影し、鉱物の分布や地形、着陸候補地の危険要因を調べています。NASAによると、このカメラは軌道上からアポロ宇宙飛行士の足跡や着陸地点も捉えています。
同じ月面を人の目と周回機のカメラで記録することで、色や明るさの見え方を機器のデータと照らし合わせられます。NASAは、太陽光の角度によって色調や明暗、コントラスト、表面の質感の印象が変わると説明しており、乗組員の記録は観測条件を考慮する材料にもなります。









