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インカ帝国の儀礼「カパコチャ」で犠牲となった子ども8人の毛髪や爪を分析した研究で、コカの使用を示す成分のほか、1人の爪からハルミンが検出されました。幻覚作用のある物質は分析対象から検出されず、研究チームは、薬物が主に山越えの負担を和らげる目的で使われた可能性を挙げています。

カパコチャで犠牲となった8人を分析

カパコチャは、統治者の死去や即位、祭礼、自然災害などに際して行われた宗教儀礼です。子どもたちは神々への使者とされ、聖別の儀式を経て、帝都クスコや各地の聖地へ送られました。

研究チームは、ペルーとアルゼンチンの火山付近に埋葬された8人の毛髪と爪を調べました。液体クロマトグラフィー質量分析法を用い、コカインやその代謝物、幻覚作用に関係する物質などを検査しています。

毛髪からは、コカの摂取に伴うコカインとベンゾイルエクゴニンが検出されました。コカの葉をかむ習慣はアンデス地域に広く根付いており、空腹や疲労を抑える作用が山中の移動を支えた可能性があります。

コカと酒の痕跡、1人の爪にハルミン

一部の子どもからは、コカインとアルコールが体内に同時にあったときに生じるコカエチレンも検出されました。アルコールは、トウモロコシを発酵させた酒「チチャ」から摂取された可能性があります。

アンパト山で見つかった14歳の少女の爪からは、ハルミンが検出されました。この成分は複数の植物に含まれ、アマゾン原産のつる植物バニステリオプシス・カアピにも存在します。

ハルミンは複数の植物に含まれるため、検出だけでは少女が摂取した植物を特定できません。アンパト山の別の子どものミイラでも過去にハルミンが検出されており、研究チームはアマゾン地域の植物が儀礼に使われた可能性を示しています。

毛髪と爪が残す化学的な記録

毛髪や爪は、摂取した物質を含むケラチン質の組織です。薬物などの物質は数週間から数カ月にわたり蓄積することがあり、毛髪の異なる部分を調べると、摂取時期の変化をたどれる場合があります。

ただし、毛髪と爪では構造や成長のしかた、物質が取り込まれる経路が異なります。血液から毛髪へ入るほか、汗や皮脂、体の外からの付着も分析結果に関わるため、検出量から摂取量や正確な時期を単純に割り出すことはできません。

今回の研究では、8歳の少女の毛髪に残る約6カ月分の化学的な変化も調べられました。コカの摂取が亡くなる前の月に減り、アルコールの摂取が始まったように見える変化がありましたが、毛髪への物質の取り込まれ方の違いでも説明できる可能性があります。

検出されなかった物質と地域差

研究チームはメスカリン、DMT、ブフォテニンなども検査しましたが、分析した試料からは検出されませんでした。一度だけの摂取では毛髪や爪に痕跡が残らないこともあり、検出されなかった物質が儀礼中に使われなかったとは限りません。

コカの痕跡が共通して見つかる一方、ほかの物質の検出には個人差がありました。研究チームは、カパコチャの実践が地域や山の神々に関する伝統によって異なっていた可能性を指摘しています。

研究チームは今後、儀礼で使われた物質をさらに調べるほか、ドローンやレーザー測量、地中レーダーを使ってアンデスの聖山遺跡を調査する計画です。こうした調査を通じて、子どもたちの出身や儀礼の準備、地域ごとの実践について理解を深めようとしています。