Pesticide spraying in cultivation in Andhra Pradesh
写真: PJeganathan / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

研究チームは、殺虫剤クロルピリホスへの長期の居住曝露と、パーキンソン病リスクの上昇との関連を報告しました。マウスやゼブラフィッシュを使った実験では、神経細胞の損傷に、オートファジーと呼ばれる細胞内の再利用・清掃機能の障害が関与する可能性も示されました。

長期の居住曝露とパーキンソン病リスク

研究チームは、パーキンソン病と診断された829人と、診断されていない824人の情報を分析しました。カリフォルニア州の農薬散布記録と参加者の居住地・職場の履歴を組み合わせ、クロルピリホスへの曝露を推定しています。

長期にわたって居住地で曝露した人では、曝露がなかった人と比べ、パーキンソン病のリスクが2.5倍を超えていました。

パーキンソン病では、運動の調整に関わるドーパミン産生神経細胞が失われます。研究チームは、集団データに加え、実験動物でも同様の神経細胞の変化が起きるかを調べました。

マウスで確認された運動障害と神経細胞の変化

マウスには、環境中で起こりうる吸入を模した方法で、11週間にわたってクロルピリホスをエアロゾル状に曝露しました。曝露したマウスには運動上の問題が見られ、ドーパミンを作る神経細胞も減少しました。

マウスの脳では炎症と、アルファシヌクレインというタンパク質の異常な蓄積も確認されました。このタンパク質は通常、神経細胞に存在しますが、パーキンソン病では異常な塊を形成することがあります。

研究チームはさらに、ゼブラフィッシュを用いて、クロルピリホスが神経細胞を損傷する仕組みを調べました。

オートファジー障害と別の神経作用

ゼブラフィッシュでの実験では、クロルピリホスがオートファジーを妨げ、神経細胞内に損傷した物質が蓄積する過程が示されました。オートファジーは、細胞が傷んだタンパク質などを分解する仕組みです。

研究チームが実験でこの細胞内の清掃機能を回復させたり、シヌクレインを取り除いたりすると、神経細胞は損傷から保護されました。保護効果は実験モデルで確認されたもので、ヒトでの治療効果を示す結果ではありません。

クロルピリホスは有機リン系殺虫剤です。別の神経毒性研究では、細胞の発達に関わるモデルをクロルピリホス、クロルピリホスオキソン、ダイアジノンに48時間曝露し、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の遺伝子発現を調べました。AChEは神経伝達に関係する酵素です。この研究では、AChEの酵素活性阻害とは別の作用も調査しました。

他の農薬をめぐる研究との位置づけ

2006年の文献レビューは、農薬曝露とパーキンソン病との関連は疫学研究で比較的一貫して見られ、除草剤・殺虫剤や長期間の曝露で強い傾向があると評価しました。一方、個別の農薬については、パラコートやロテノンの神経毒性を示す知見を挙げ、他の農薬のデータは限られると整理しています。同レビューは、研究方法上の弱点も踏まえ、農薬全般との関連は認められるものの、特定化合物の因果関係を結論づけるには証拠が足りないとしました。

東テキサスの症例対照研究では、クロルピリホス製品の使用とパーキンソン病との関連が報告され、オッズ比は2.0でした。同じ研究では、過去1年間の園芸でのロテノン使用についてオッズ比10.9、過去のロテノン使用について10.0が報告されています。

日本の農薬登録と化学物質規制

日本ではクロルピリホスの農薬登録が2025年に失効しました。政府によると、過去10年間に製造・輸入の届出実績はなく、今後の製造・輸入・使用を予定する事業者もいません。

ストックホルム条約の締約国会議は2025年、クロルピリホスを廃絶対象に追加することを決定しました。これを踏まえ、政府はクロルピリホスを化審法の第一種特定化学物質に指定し、試験研究用途を除いて製造・輸入・使用を禁止する措置が適当と整理しました。

政府の審議では、木材用防虫剤について、クロルピリホスを含む製品の輸入を禁止対象に指定する措置案が適当とされました。