Researcher holding a lab mouse - Crimean Federal University - ANDY7392
写真: Andrey Chernogorodov / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

シロシビンを1回投与したところ、mGlu5受容体を欠く統合失調症モデルの雌マウスで、感覚刺激を選別する機能の指標が改善し、その変化は投与9日後にも確認されました。一方、投与直後には同モデルのマウスで活動量などが増えており、急性反応と長期的な変化は異なる経過を示しました。

雌マウスで投与9日後もPPIが改善

研究では、統合失調症に関連する特徴を示すモデルとして、mGlu5(代謝型グルタミン酸受容体5)を欠損させたマウスと、遺伝的に通常のマウスを比較しました。4カ月齢の雌雄にシロシビンまたは生理食塩水を投与し、行動試験には96匹、脳の分析には別の61匹を使いました。

主な結果は、雌の欠損マウスでプレパルス抑制(PPI)が持続的に正常化したことです。PPIは、大きな音の直前に弱い音を聞かせたとき、驚き反応がどれほど抑えられるかを測り、脳が重複する感覚刺激をふるい分ける働きの指標として使われます。

改善は投与翌日だけでなく、9日後にも確認されました。シロシビンは不安様行動を変化させず、強制水泳試験では不動時間を増やしました。今回の行動試験では、指標によって変化が異なりました。

投与直後は欠損マウスの活動量が増加

投与後30分の行動試験では、mGlu5欠損マウスの移動距離がシロシビンによって増えました。遺伝的に通常のマウスでは、投与による移動距離の変化は統計的に有意ではありませんでした。

頭を素早く左右に振る「ヘッドツイッチ」も、シロシビン投与群で増加しました。この動きはマウスにおけるセロトニン2A受容体の活性化を示す行動指標ですが、幻覚や精神病症状を直接測るものではありません。

ヘッドツイッチの増加は、欠損した雄で通常の雄より大きく見られました。研究では、通常の雌も比較的多く反応したことなどから、単純な雌雄差ではなく、mGlu5欠損による反応性の変化として解釈しています。

脳活動の変化とmGlu5・セロトニンの関係

投与90分後の脳組織では、最近活動した神経細胞の目印となるc-Fosが、通常のマウスの前障で増加しました。前障は大脳皮質の下にある神経細胞の薄い領域です。欠損マウスでは、シロシビンによる同領域のc-Fos増加は統計的に有意ではありませんでした。

これまでのマウス研究では、mGlu5受容体を欠く個体は通常の個体より活動量が多く、セロトニン2A受容体を刺激する化合物DOMによって、その活動量がさらに増えました。セロトニン2A受容体を遮断する薬剤は、欠損マウスの過剰な活動を抑えました。

この結果は、mGlu5受容体の欠損がセロトニン2A受容体を介する行動反応に関係することを示す先行例です。ただし、この先行研究が調べたのはDOMなどへの反応であり、今回のシロシビン投与による長期的なPPI変化とは別の実験結果です。

マウスのPPI改善を人の効果と同一視できない

PPIは統合失調症のある人で低下することがあり、mGlu5欠損マウスでも低下が報告されています。そのため、今回の試験では感覚フィルタリングに関係する行動指標として用いられました。

一方、mGlu5欠損マウスのPPI低下を調べた別の研究では、抗精神病薬のクロザピンやラクロプライド、気分安定薬のラモトリギンを投与しても、その低下は改善しませんでした。薬理学的に誘発したPPI低下への反応とは異なる結果でした。