
チェルノブイリ原発事故から約40年後に採取された放射性燃料粒子6個を調べたところ、核燃料を閉じ込める構造はおおむね保たれていました。放射性物質が環境へ出る速度は想定より遅い可能性がある一方、粒子自体はなお危険で、風化の程度は粒子の性質や土壌条件によって異なります。
6個の粒子を3種類に分けて分析
試料はチェルノブイリ立入禁止区域内の2地点から集められ、大きさは8〜50マイクロメートルでした。事故時に燃料が受けた変化に基づき、核燃料の二酸化ウランに近い粒子、ジルコニウム層に覆われたり融合したりした粒子、黒鉛減速材の火災で生じた粒子の3種類に分類されました。
研究チームは、X線回折を利用して粒子内部の結晶構造を調べました。回折分析は、物質に当てたX線の反射の仕方から、原子の並び方を調べる方法です。粒子をX線ビームの中で回転させ、各粒子を2,000の角度から測定しました。
分析した3種類すべてで、核燃料を保持する構造は大きく損なわれずに残っていました。この結果は、燃料粒子がこれまで考えられていたより化学的に安定している可能性を示します。ただし、対象は6個に限られ、採取地点も2か所です。
事故時に放出された燃料と粒子
事故直後に推定された環境への燃料放出量は、炉心にあった量の3±1.5%でした。その後の推定は3.5±0.5%に改められ、環境へ放出された燃料は6トンに相当するとされました。
放出物には気体やエアロゾルのほか、細かく砕けた燃料が含まれていました。セシウムやテルルなどの揮発性元素はエアロゾルに付着して燃料粒子とは別に運ばれ、揮発しにくい元素の一部は燃料粒子に取り込まれていました。事故時の放出量と、その後に粒子から周囲へ放射性物質が移る速さは、異なる過程です。
事故時に放出された粒子は大きさによって広がり方も異なり、大きな燃料粒子は主に原発から100キロ以内に沈着しました。小さな粒子は風で遠くまで運ばれ、主に雨とともに地面へ落ちました。
風化や溶出には粒子ごとの差
1995年と1996年に立入禁止区域で採取した土壌を使った研究では、燃料粒子の風化と核種の溶出に伴い、ストロンチウム90が土壌中で移動しやすくなるとされました。粒子が溶ける速度は、主に粒子の物理化学的性質に左右され、土壌の酸性度にも一部影響されます。そのため、粒子ごとの溶解速度には差があります。
原発の西側にある汚染地域では、ほかの地域と比べて粒子の溶解速度が大幅に低いと報告されました。研究では、その地域の粒子は放出前に酸化していなかった可能性が示されています。粒子の種類や土壌のpHに応じた核種の溶出、土壌から植物への移行を記述する数理モデルも作られました。
今回の6粒子の分析で構造が保たれていたことは、環境中への放射性物質の放出が従来の想定より遅い可能性と整合します。以前の研究で示された粒子ごとの溶解差も、燃料粒子の状態を評価する際に考慮されます。
粒子は残り、健康上の危険も続く
核燃料を閉じ込める構造が保たれているということは、放射性物質の多くが粒子内に残っていることを意味します。環境へ出る速度が遅い可能性がある一方、放射性物質が消えたわけではなく、粒子は今後も危険な状態にあります。粒子を吸い込むと健康に深刻な危険が及びます。
風や地面の浸食、動物の通過によって粒子が地表から巻き上がる可能性もあります。研究に携わったトビアス・ヴァイセンボルン氏は、粒子が全体として似た形で崩壊しても、長く残って後から放射性核種を放出する粒子は存在すると述べています。また、平均的な傾向だけから地域の健康リスクを一律に述べることはできないとしています。
研究チームは、チェルノブイリの長期的な環境リスクをより詳しく評価するには、より幅広い試料を長期間にわたって集める必要があるとしています。











