ラコサミド、変形性関節症の痛みと軟骨損傷を抑える可能性 マウスと培養細胞で確認
出典: fda.gov

ラコサミドで痛みと軟骨の変化を調べる

てんかん治療薬として承認されているラコサミドについて、マウスの変形性関節症モデルと培養したヒト軟骨細胞を用いた研究で、痛みの軽減と軟骨修復を促す作用が確認されました。変形性関節症では、骨の間でクッションや潤滑の役割を担う軟骨が損なわれます。今回の結果は、症状の緩和に加え、軟骨の変化にも働きかける治療の可能性を示しています。

研究チームは、ナトリウムチャネル遮断薬のラコサミドに着目しました。痛みの信号と軟骨の維持の両方に関わるタンパク質Nav1.7の活動を抑え、痛みと軟骨損傷に作用する可能性を調べました。

実験では、ラコサミドが軟骨修復を促し、劣化を遅らせるとともに痛みを軽減しました。ただし、結果はマウスと培養細胞で得られたものです。患者を対象とする試験は今後の課題です。

Nav1.7は軟骨の維持と痛みに関わる

軟骨細胞は、古い組織を取り除く働きと新しい組織を作る働きのバランスを調整します。Nav1.7は軟骨細胞で活動し、組織の入れ替わりに関与します。変形性関節症ではこのバランスが崩れ、軟骨の損失が進みます。

先行研究では、遺伝子操作した複数のマウスモデルを用いて、Nav1.7と軟骨、痛みとの関係が調べられました。軟骨細胞でNav1.7を欠失させると、軟骨の損失と痛みが抑えられました。一方、感覚神経にあたる後根神経節の神経細胞だけで欠失させた場合、痛みは軽減しましたが、軟骨の病変には変化がありませんでした。

この結果は、Nav1.7が神経で痛みの伝達に関わるほか、軟骨細胞では軟骨の維持にも関与することを示しています。変形性関節症の関節ではNav1.7の活動が高まり、軟骨の損失と痛みにつながる可能性があります。ラコサミドを使った研究では、このタンパク質を抑えることで、痛みと軟骨の損失の両方に働きかけられるかを調べています。

関節内注射とハイドロゲルを検討

投与方法の比較では、マウスの患部に直接注射すると、経口投与より低用量でも効果が高かったと報告されています。ただし、薬は関節内に長くとどまらず、効果を保つには繰り返し注射する必要がありました。

そこで研究では、薬をハイドロゲルに入れて関節内に注射しました。ハイドロゲルは、薬を患部にとどめて時間をかけて放出する局所の貯蔵体として使われています。研究者は、マウスでの試験から、薬の放出が1カ月以上続く可能性を述べています。

関節内投与とハイドロゲルの結果も、現段階ではマウスでの実験に基づきます。患者でも同じ効果や投与間隔が得られるか、臨床試験で検証する必要があります。次の段階では、患者を対象に痛みへの作用と軟骨の変化を確かめます。

現行治療との違いと臨床への距離

米国リウマチ学会と関節炎財団は、膝や股関節の変形性関節症に対し、運動、太極拳、自己管理プログラムを初期の非薬物療法として推奨しています。体重管理も痛みの軽減に関係し、体重を5%減らすと膝や股関節の痛みの改善が見られるとされています。これらの治療は、痛みや機能の改善を目的とします。

薬物療法では、経口の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や関節内の副腎皮質ステロイド注射が、痛みや機能に短期的な改善をもたらします。米国リウマチ学会と関節炎財団は、変形性関節症の進行そのものを変える有効な薬は確認されていないとしています。そのため、痛みを抑える治療と、軟骨の損失を防いだり修復したりする治療では目的が異なります。

2005年の治療レビューでは、運動や体重管理、薬、理学療法などの現行アプローチは、主に痛みを減らし、関節の動きを保つことを目指すと整理されています。同レビューでは、副腎皮質ステロイドや関節内の粘弾性補充療法は短期的な反応を示す一方、長期的な関節構造の変化には結びついていないと評価されています。ラコサミドの研究は、痛みの軽減に加えて軟骨の修復や劣化抑制を狙っており、患者を対象に検証する段階です。