ケタミンとシロシビンなどの幻覚薬に共通する免疫系の変化が、ケタミン治療への反応と関連する可能性を示す研究が発表されました。

薬の標的が異なっても共通する変化を探索

ケタミンはNMDA受容体を阻害し、シロシビンやLSDなどのセロトニン系幻覚薬は特定のセロトニン受容体を刺激します。いずれも速やかな抗うつ効果が報告されていることから、研究チームは細胞内で共通する分子経路が働く可能性を調べました。

研究では、ケタミンとその代謝物HNK、LSD、シロシビンを、ヒトの人工多能性幹細胞から作った神経細胞に投与し、遺伝子発現を解析しました。さらに、静脈内ケタミンを受けた健康な参加者の脳脊髄液に含まれるタンパク質のデータと照合しました。

照合で見つかった103種類のタンパク質のうち、86%はケタミン以外の薬の少なくとも一つでも変化していました。相互作用の分析では、免疫シグナルを中心とするネットワークが主要なまとまりとして浮かび、インターロイキン15(IL-15)と単球走化性タンパク質1(MCP-1)が中心的な分子として挙がりました。

血液の免疫変化と治療反応

研究チームは、治療抵抗性うつ病の参加者39人と健康な参加者25人を含む臨床試験のデータも分析しました。参加者はケタミンまたはプラセボを1回、静脈内投与され、血液中の遺伝子発現などが調べられました。

治療前にケタミンへ反応した患者では、反応しなかった患者よりIL-15の活性が低く、抗体を作るB細胞に関わるシグナルが高い傾向がありました。投与4時間後にはこの関係が逆転し、反応者のIL-15活性は上がり、B細胞シグナルは低下しました。

血漿中のインターロイキン7(IL-7)と脳波活動の関係も変化しました。治療前は、うつ病患者でIL-7濃度が高いほど、脳の深部領域などのガンマ波活動が高い関係が見られましたが、ケタミン投与後は、IL-7濃度の高さがデフォルトモードネットワークのガンマ波活動の低下と結びつきました。

免疫分子の比率と研究の限界

治療前のMCP-1とIL-7の比率が高い場合はケタミンへの反応が弱く、インターロイキン4(IL-4)とインターフェロンガンマ(IFN-γ)の比率が高い場合は反応が良いことが、それぞれ予測されました。研究チームは、IL-7とIL-15を含む免疫シグナルのバランスが治療効果に関わる可能性を示しました。

免疫分子の比率が治療反応を確実に予測するかは、まだ明らかになっていません。研究は仮説を立てる段階で、予測指標としての有用性や免疫経路を調整する治療の効果を確かめるには、より大規模で独立した研究が必要です。

実験に使った神経細胞は女性ドナー由来で、脳脊髄液の試料は健康な参加者から採取されました。また、臨床試験では採血が投与4時間後、脳画像の測定が6〜9時間後に行われており、この時間差が結果の解釈に影響する可能性があります。