
2025年5月、神戸市内のホテルの客室に置かれたPCが、ホテルのWi-Fiを使って約48万通のフィッシングメールを送信しました。メールにはクレジットカード会社を装った文面と偽サイトへのリンクが含まれ、PCには約240万件のメールアドレスが保存されていました。宿泊客から連絡を受けたホテルが機器を発見し、警察に通報したことで捜査につながりました。
冷蔵庫の裏に置かれたPC
PCを設置したのは、神戸市内に住む中国籍の夫婦とされています。夫婦は不正業務妨害や建造物侵入、コンピューター詐欺などの容疑で逮捕されました。
PCは5月15日にホテルのWi-Fiへ接続され、客室の冷蔵庫の裏に隠されていました。遠隔操作されていたとみられ、現地で保守作業をせずに設置場所へ置き続けられる状態だったとされています。
メールの受信者がホテルへ連絡した後、スタッフが機器を発見しました。メッセージのメタデータにホテルのIPアドレスが記録されていたことも、設置場所の特定につながりました。警察は、夫婦が計画の主導者だったのか、別の人物の指示で動いていたのかを捜査しています。
メールの経路を記録するヘッダー
メールヘッダーは、宛先や送信者、件名など、メールに付随する制御用データです。通常のメール画面では見えない情報も含まれ、メッセージが送信先へ届くまでの経路を調べる手がかりになります。
メールサーバーを経由した情報は「Received」欄に記録され、複数ある場合は下から上へ読むと送信経路をたどれます。ヘッダーには経由したサーバーのアドレスも記載されるため、送信に使われたネットワークを調査する際に参照されます。
画面に表示される「From」は偽装される場合があり、実際の送信元を示すとは限りません。「Return-Path」とFromのアドレスが異なる場合は不審な点として確認できますが、ヘッダーのメタデータ自体にも偽造可能な項目があります。このため、ホテルのIPアドレスが記録された事実は、送信に使われた接続先を示す手がかりであり、設置者の身元を単独で確定するものではありません。
客室Wi-Fiで不正機器を見つける対策
ホテルのネットワークを宿泊客用、従業員用、管理用に分けると、宿泊客の端末から予約や決済などの内部システムへ接続できる範囲を制限できます。ゲスト用ネットワークを内部システムから分離し、接続端末同士の通信も遮断する設計が提案されています。
ネットワーク通信をリアルタイムで監視し、通常と異なる通信量の急増や、制限対象への接続を検知する方法もあります。客室のWi-Fiに接続した端末の通信を継続的に把握し、不審な活動の早期発見を目指します。
宿泊客ごとの一時パスワードや使い切りコードを設けると、共通パスワードだけで接続を管理する場合よりアクセスを制限できます。機器やソフトウェアを定期的に更新し、既知の脆弱性を修正することも対策として挙げられています。従業員が不審な通信やフィッシングを見分けて報告できるよう訓練することも、ネットワーク監視と合わせた運用策です。
夫婦をめぐる別の不正購入捜査
夫婦はフィッシングとは別に、盗んだクレジットカード情報を使って神戸市内で商品を購入した疑いも持たれています。警察は自宅から74台のスマートフォンを押収したと報じられており、夫婦は2024年以降、他人のカード情報を使って1,000万円相当、約63,000ドル(約990万円)の買い物をしたとされています。
フィッシングメール送信に使われたPCと、カード情報を用いた購入の両方について、警察が捜査を続けています。







