
ロシアの漁船17隻が米国と欧州を結ぶ海底ケーブルの経路を調査していたと報じられました。4年半にわたり、ロシアの漁船が重要な通信ケーブルの上で低速航行や滞留をした事例も500件超記録されています。海底ケーブルは国際通信を支えるインフラです。船の航跡とケーブルの位置を照合した調査を受け、監視活動への懸念が示されています。
船の航跡とケーブル経路の重なり
報道で挙げられた一隻は、大西洋を通る9本のケーブルの経路に沿って航行しました。その中には、米国と欧州を結ぶ通信ケーブル「Atlantic Crossing 1」や、すでに運用を終えた「TAT-14」が含まれます。
別の船は大西洋横断ケーブル「Hibernia Express」の近くに滞留した後、シェトランド諸島とフェロー諸島を結ぶ「Shefa-2」の経路をたどりました。さらに別の船は、英国、フランス、スペインと米国を結ぶ「Amitie」と「Grace Hopper」の経路を一部航行したとされています。
これらの船は複数回速度を落とし、時には2〜3ノットで進んでいました。漁船の位置情報は衛星データから得られ、海図に記されたケーブルの位置と照合されています。
ソナーを使った海底地形の調査
ソナーは音波を海中へ送り、海底などで反射して戻るまでの時間から周囲の情報を得る仕組みです。マルチビームソナーは複数方向に音波を発し、海底の深さを測定して立体的な地形図を作ります。
船体に取り付けたマルチビームソナーは、海底の広い範囲を効率よく測量できます。一方、海が深くなると海面上の船から作る地図の解像度は下がるため、より細かな地形を調べるにはソナーを海底に近づける必要があります。
ソナーを遠隔操作型無人機(ROV)に取り付けたり、船から曳航したりする方法があります。反射音の強さから海底の硬さや、海底から立ち上る気泡などを把握できる場合もあります。海軍将校は、ソナーを搭載したROVを調査対象の上方100メートルに置けば、ミリメートル単位の精度で地形を地図化できると述べています。
海底ケーブルをめぐる監視の難しさ
NATOの代表者は、ロシアの民間漁船の活動や位置を把握していると述べました。また、海軍将校は、疑わしい活動をする船の中には、漁獲物を一度も甲板に載せたことがない船もあると語っています。ただし、航跡がケーブル経路と重なることだけでは、船が実際に調査機器を使ったとは確認できません。
海底ケーブルは非常に長く、常時巡回による保護は難しいとされています。ケーブルの多くは公海上にあります。疑わしい船を追跡していても、通常はその活動だけを根拠に乗船検査や拿捕を行うには至らないと報じられています。
ケーブルが損傷すると、通信事業者は別の経路へ通信を迂回させることがあります。2024年の紅海では、通信事業者HGCがアジアと欧州、中東の間の通信の25%に影響が出たと推定し、影響を抑えるために迂回を進めました。別のケーブル障害では、Microsoft Azureの通信が代替経路へ切り替わり、ネットワーク通信は続いたものの、一部で遅延が生じたと報告されています。
航行を追跡しても阻止には限界
航跡の監視は活動の把握に役立つ一方、国際水域を航行する船への対応には制約があります。










