西部地域の合法化後に心血管疾患の入院率が上昇
米国西部で娯楽用大麻の合法販売が始まった後、心房細動、心不全、心筋梗塞による入院率が上昇しました。2012〜2018年の入院データを分析した結果、合法化との統計的な関連が示されました。ただし、個人の大麻使用が病気を引き起こしたと証明する結果ではありません。
研究チームは、全米入院患者データベースの2012〜2018年分を分析しました。西部地域では2014年に合法販売が始まり、ほかの地域で合法化が進むのは2018年11月でした。この時期の差を利用して、合法化前後の西部と他地域の入院率を比較しました。
分析対象は6種類の心血管疾患で、心房細動・粗動、心不全、心筋梗塞、虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症、心室頻拍が含まれます。データは米国の入院患者を代表するよう重み付けされ、研究全体で5,000万件を超える入院が対象になりました。
心房細動・心不全・心筋梗塞で関連
調整後の分析では、合法化が1年進むごとに、心房細動・粗動の入院率は相対的に約2.3%、心不全は約3.7%、心筋梗塞は約3.1%上昇する関連がありました。いずれも統計的に有意でした。
一方、虚血性脳卒中は約1.1%の変化でしたが、統計的に有意ではありませんでした。静脈血栓塞栓症も約0.9%の増加にとどまり、有意差はありませんでした。心室頻拍にも有意な変化は見られませんでした。
比較の確認として、大麻関連の診断による入院率は合法化後に増加した一方、尿路結石とオピオイド関連診断では有意な変化がなかったことも報告されました。これらは分析上の対照として用いられました。
大麻成分の作用と個人使用の研究
大麻に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は交感神経系を活性化し、心拍数や心筋の酸素需要を高めるほか、血小板の活性化や血管内皮への作用も指摘されています。ただし、こうした生理作用だけでは、今回の地域別の入院率上昇の原因を特定できません。
THCの血行動態への作用を調べた31研究のレビューでは、人の心拍数は急性投与後に平均で毎分8.16拍増加しました。動物では急性投与後に血圧と心拍数が低下する結果が報告され、作用は種や実験条件によって異なりました。
同レビューでは、人を対象としたTHC投与で、用量が増えるほど心拍数が上がる傾向も報告されました。人の血圧や血流を調べた研究は含まれておらず、著者らは人の血行動態に関するデータが限られているとしています。
個人使用のメタ分析でも関連を報告
別のシステマティックレビューとメタ分析は、2016年から2023年初めまでに公表された研究から24報を採用しました。内訳は横断研究17件、コホート研究6件、症例対照研究1件で、主に大麻使用と重大な心血管イベントとの関連を調べています。
調整済み推定値を統合した結果、大麻使用は急性冠症候群と相対リスク1.29、脳卒中と1.20、心血管死と2.10の関連を示しました。急性冠症候群には心筋梗塞が含まれます。
コホート研究に絞った分析でも、急性冠症候群の相対リスクは1.32でした。これらは個人使用を扱った研究群の結果で、合法化後の地域別入院率を分析した研究とは対象と分析方法が異なります。
因果関係の確定には至らず
西部地域の分析は観察研究であり、合法化と入院率の上昇が同時に見られたことを示します。研究デザインによって個人ごとの交絡要因の影響は抑えられますが、合法化の時期に地域間で別の傾向が始まっていた可能性は残ります。
また、入院データでは州ごとの合法化状況を個別に比較できず、西部地域全体を2014年から対象地域として扱っています。研究チームは、この設計が結果を小さく見積もる可能性にも触れています。
研究著者らは、今後の合法化に慎重な姿勢を取り、心血管系の結果を詳しく収集する必要性を述べました。今後は、個人使用の実態や成分、摂取方法と健康影響の関係を調べる研究が課題です。











