シベリアのペスト研究施設で働いていた職員が死亡し、世界保健機関(WHO)はロシアに詳しい情報を求めています。ロシア当局は調査を続けています。肺ペストは重い肺感染症で、せきによる飛沫を介して人から人へ広がることがあります。
肺ペストは肺に及ぶ重い感染症
ペストは、主に小型哺乳類やノミに存在するペスト菌(Yersinia pestis)による感染症です。肺ペストのほか、リンパ節に影響する腺ペスト、血液に影響する敗血症型があります。
肺ペストは、ほかの型のペストに感染した後、菌が肺に広がって発症することがあります。息切れ、胸の痛み、せきなどが症状で、血の混じったたんが出る場合もあります。
WHOによると、肺ペストの潜伏期間は短く、24時間ほどの場合もあります。診断と治療が遅れると、ほぼ常に致命的になると専門家は警告しています。
感染は近距離での飛沫や動物との接触から
感染したノミに刺されることや、感染した動物を扱うことが、ペストの主な感染経路です。肺ペストでは、感染者のせきで飛び散った飛沫を近くにいる人が吸い込むことでも感染します。
国境なき医師団(MSF)の診療指針では、感染動物への直接接触やノミの刺咬に加え、肺ペスト患者の呼吸器分泌物を吸い込むことでも感染するとされています。MSFは、肺ペストが呼吸困難やショックへ急速に進行し、迅速な治療がなければ死に至る可能性があるとしています。
米疾病対策センター(CDC)は、人から人へ感染するペストの型は肺ペストのみとしています。感染者と近距離で接触し、適切な個人用防護具を使っていなかった人などは、曝露後予防の対象となり得ます。
発症後は疑われた段階で治療を始める
MSFは、ペストが疑われた時点で診断検査の結果を待たずに抗菌薬治療を始め、通常10〜14日間続けるよう推奨しています。重症の場合は、異なる種類の抗菌薬を2剤組み合わせる指針です。
CDCは、成人のペスト治療に使う第一選択薬として、シプロフロキサシンなどのフルオロキノロン系薬を挙げています。肺ペストや敗血症型では、アミノグリコシド系薬も第一選択薬に含まれます。ドキシサイクリンは肺ペストの第一選択ではなく、第一選択薬が使えない場合の代替薬とされています。
CDCの研修では、曝露後予防として抗菌薬を経口で7日間投与する方法が示されています。MSFは、肺ペスト患者から2メートル未満で防護具なしに接触した場合などを対象とし、曝露終了後1週間以内にドキシサイクリンまたはシプロフロキサシンを始めるよう指針を示しています。発症後の治療と接触後の予防では、対象となる状況や投与期間が異なります。
研究施設では封じ込めと飛沫対策を行う
ボストン大学の研究職業健康プログラムは、ペスト菌をリスクグループ3に分類し、取り扱いにバイオセーフティーレベル3(BSL-3)の実践を推奨しています。感染の可能性がある検体や菌株を扱う作業には、BSL-3または動物実験向けのABSL-3の設備と手順が推奨されています。
同プログラムは、感染の可能性がある動物の解剖を安全キャビネット内で行い、エアロゾルの発生を避けるよう推奨しています。エアロゾルに接触するおそれがある場合は、N95マスクを含む防護具を挙げています。
『Saudi Journal of Medicine and Public Health』に掲載されたレビューでは、リスクグループ3の病原体を扱う施設に必要な封じ込め策として、陰圧、HEPAフィルター、徹底した訓練が挙げられています。










