
腸内細菌の構成と老化速度に関連
ハワイ大学マノア校の研究チームは、腸内細菌の構成と生物学的老化の速度に関連があったと報告しました。123人の便と血液のサンプルを調べたところ、細菌群の違いは、参加者間の生物学的老化速度の差の約15%と関連していました。
生物学的老化は、誕生からの年数を示す暦年齢とは異なり、体内の老化に関わる変化がどの速さで進むかを捉える指標です。今回の研究では、血液中の分子指標と腸内細菌の構成を比較し、DunedinPACEとの関連を調べました。
Bifidobacterium adolescentisは遅い老化速度と、Succinivibrio dextrinosolvensは速い老化速度と、それぞれ強い関連を示しました。これは参加者の腸内細菌と老化指標の間に見られた関連であり、特定の細菌が老化を遅らせたり速めたりすることを示す結果ではありません。
DunedinPACEが捉える「速度」
DunedinPACEは、血液のDNAメチル化をもとに生物学的老化のペースを推定する指標です。DNAメチル化は、DNA配列を変えずに遺伝子の働き方に関わる化学的な目印です。DunedinPACEは生物学的な年齢そのものではなく、老化の進行速度を扱います。
指標の開発では、ニュージーランドのダニーデン研究の参加者を約20年にわたって4時点で追跡し、19の臓器系統の状態の変化を基礎にしました。その長期的な変化を、1回の血液検査で測定したDNAメチル化データから推定するようモデル化しています。
今回の研究では、便の16S rRNA遺伝子解析と、血液中の単球を多く含む細胞のDNAメチル化測定を組み合わせました。123人のデータを使って腸内細菌からDunedinPACEを予測するモデルを作成しましたが、暦年齢を加えても予測性能は上がりませんでした。
従来の年齢指標との違い
同じ解析では、Horvath、Levine、GrimAge2という従来型のエピジェネティック時計も検討しました。これらはDNAメチル化から年齢を推定する指標です。今回の腸内細菌データから、各時計の年齢加速残差を予測する有意な信号は得られませんでした。
一方、DunedinPACEを予測するモデルでは、細菌を種単位で扱った場合、決定係数R²は0.152、順位相関係数ρは0.408となり、統計的に有意な関連が報告されました。属単位のモデルでも統計的に有意な関連がありました。
この研究は、ハワイの123人を対象に、腸内細菌の構成とDNAメチル化に基づく老化速度との関係を検討した概念実証です。参加者には、これまで老化や腸内細菌の研究で十分に代表されてこなかったハワイ先住民と太平洋諸島系の人々も含まれています。
研究が示す範囲と次の課題
腸内細菌の構成と生物学的老化速度の関連は、暦年齢とは独立して見られました。研究チームは、食事や生活習慣、環境によって腸内細菌の構成が変化しうることを、この分野を調べる背景として挙げています。
今回確認されたのは関連であり、因果関係ではありません。特定の細菌が多い人で老化速度の指標に違いが見られても、その細菌が老化の進み方を変えたとは結論できません。腸内細菌を意図的に変えることで老化指標が変化するかは、今後の研究課題です。
別のヒト研究では、25〜75歳の108人を対象に、中央値1.7年間にわたり血液、便、皮膚、口腔、鼻腔のサンプルを追跡する多層オミクス解析が行われました。調査項目には、腸内細菌のほか、遺伝子発現、タンパク質、代謝物などが含まれています。この研究は複数の分子データを扱う設計で、今回の123人の研究とは対象集団や測定の組み立てが異なります。











