
NASAのArtemis III(アルテミスIII)は、月面着陸ではなく地球低軌道で、Orion宇宙船とBlue Origin、SpaceXが開発する月着陸船の試験機との運用を確かめる計画です。2027年に4人の宇宙飛行士が参加し、3機の宇宙機を別々のロケットで打ち上げて、ドッキングや機器の連携を試します。 この飛行で得る運用経験は、2028年以降の月面着陸に向けた準備の一部となります。

3機を別々に打ち上げてドッキングを実証
計画では、Blue OriginのNew GlennがBlue Moon Mark 2の試験機を地球低軌道へ運び、その後NASAがSpace Launch System(SLS、宇宙発射システム)でOrionと乗員を打ち上げます。続いてSpaceXがStarship Version 3の試験機を打ち上げ、NASAは短期間に3種類のロケットで3機を軌道へ送り、単一のミッション内で接続試験を行います。
乗員はNASAのRandy Bresnik、Frank Rubio、Andre Douglasの各飛行士と、欧州宇宙機関(ESA)のLuca Parmitano飛行士です。Orionは当初、近地点と遠地点の異なる楕円軌道に入り、その後、高度約345マイルの円軌道へ移る計画です。Blue Moon Mark 2の試験機は高度約273マイルの円軌道で待機します。
乗員はOrionの機器を点検した後、Blue Moon Mark 2と合流してドッキングし、試験機内に入ります。約2日間にわたり、船内の環境や操作系、生命維持機能を確認します。Orionとの通信や誘導、ソフトウェアなども評価対象です。
Blue MoonとStarshipで異なる月面輸送構想
2028年の有人月面着陸に向けたBlue Moon Mark 2の構想では、3段の移送機が着陸船とともに飛行します。各段は推進剤を使い切ると分離し、機体は月の楕円極軌道へ向かいます。乗員2人が着陸船へ移り、月の南極に降下して活動した後、Orionへ戻る手順です。
SpaceXのStarshipは、低軌道で複数のタンカー機から推進剤をデポ機へ移し、その燃料で月着陸船を準備する構想です。月着陸船は地球軌道でOrionとドッキングし、月へ向かう噴射を行って低月軌道へ進みます。乗員2人が月面で数日間活動した後、着陸船でOrionへ戻る想定です。
Artemis IIIで行うのは、これらの着陸船の試験機とOrionが地球低軌道で接続する実証です。Blue Moonの試験機には乗員が入る一方、Starshipの試験機には入らず、ドッキングと分離、通信、制御などを確かめます。NASAは、異なる設計の機体とOrionの連携を1回のミッションで試す計画です。
軌道上の試験で機体と運用のリスクを減らす
地球低軌道での試験では、異なる宇宙機のソフトウェア、誘導、通信が実際の飛行環境でどう連携するかを調べます。複数のチームや組織が運用を調整する経験も得ます。NASAは、こうした試験を月面着陸前のリスク低減と機器の検証につなげる計画です。
NASAはOrionと着陸船のドッキングに加え、宇宙船の制御性、統合ソフトウェア、通信、接続時の機体の動きも評価します。Blue Moonでは船内の気圧や雰囲気、生命維持機能を乗員が確認し、StarshipではOrionとの接続・分離を試します。両機で異なる接続方式を使うため、2種類のドッキング運用を比較できます。
NASAは、月面へ戻る前に地球周回軌道で実証を行い、将来の着陸に必要なシステムを試す位置づけを示しています。Artemis IIIの結果は、機体間の連携や乗員・地上管制の運用に関する経験となり、月面飛行の手順を整える材料になります。
着陸船の訓練設備と今後の月面計画
Blue OriginのBlue Moon Mark 2には、NASAジョンソン宇宙センターで訓練に使う実物大の乗員区画模型があります。高さは約5メートルで、宇宙飛行士が月面で使う外部はしごも備えます。NASAとBlue Originは、乗員が参加する模擬飛行や通信、宇宙服の点検などにこの設備を使います。
Artemis IIIでは、ドッキング試験後も軌道上で最大5日間を追加の試験に充てる計画です。Orionの宇宙服、ドッキングセンサー、船内の音響・熱環境、人間工学などを調べるほか、細胞生物学の実験や月試料を地球へ戻す手順の検討も行います。
NASAは2028年の月面着陸機会を計画し、Blue OriginとSpaceXのどちらが先に着陸を担うかは、着陸船の準備状況を踏まえて決めるとしています。Artemis IIIでは両社の試験機が参加しますが、月面着陸に使う企業はこの段階で決まっていません。











