
歯ブラシの毛が曲がる力で電気を生み、歯垢に関わる細菌への作用を狙う「自家発電式歯ブラシ」が開発されました。115人を対象にした3カ月の試験では、通常のナイロン毛の歯ブラシを使った人より、歯垢や歯肉の炎症、出血が少なくなりました。ただし、電動歯ブラシとの比較試験ではありません。
ブラッシングの力を電気に変える仕組み
毛には、曲げると電荷を生じる圧電材料のポリフッ化ビニリデン(PVDF)が使われています。ブラッシング中に毛がしなると電気が生じ、唾液や水との反応を通じて活性酸素種(ROS)が作られます。ROSは細菌の細胞に損傷を与える反応性の高い分子です。
ブラッシングしていないときも、毛の表面には弱い電荷が残り、細菌がブラシの毛に付着するのを抑える作用があると報告されています。研究では、電荷による静的な付着抑制と、毛が曲がることで生じる動的な作用の両方を調べました。
ROSが細菌膜を傷つけ、細菌の付着を弱める仕組みが示されました。細菌の栄養輸送に関わるABCトランスポーター経路への影響も調べています。ただし、Live Scienceが紹介した専門家のニコラス・ヤクボビクス氏は、遺伝子の変化が細菌に及ぼす影響の説明には、なお不明確な点があると指摘しています。
細菌と歯垢を使った試験結果
実験室で細菌に電気を帯びた毛を接触させると、虫歯に関わるミュータンス連鎖球菌は半数超が死滅しました。ナイロン毛で死滅した割合は9%でした。歯周病に関わるポルフィロモナス・ジンジバリスの量も最大78%減り、ナイロン毛では減少が8%未満でした。
ROSを中和する抗酸化物質を加えると、歯ブラシの抗菌作用は弱まりました。この結果は、ROSが作用の鍵である可能性を示しています。
牛の歯のエナメル質上で育てた歯垢のバイオフィルムを使った試験では、新しい歯ブラシがその99%超を除去しました。通常のナイロン毛のブラシより高い除去率でした。
115人を対象にした3カ月の臨床試験
臨床試験には、歯肉の炎症または虫歯がある成人115人が参加しました。参加者は自家発電式と従来型のナイロン毛の歯ブラシに無作為に分けられ、1日2回、3カ月間使用しました。
試験終了時、自家発電式を使ったグループでは、歯垢、歯肉の炎症、歯肉からの出血が、従来型を使ったグループより少なくなりました。歯垢の検体では、口腔疾患に関わる細菌が少なく、口腔の健康を支える有益な細菌が多く確認されました。
一方、別のネットワークメタ分析は、手動式と複数の電動歯ブラシ技術を比べた19件の無作為化比較試験をまとめています。歯垢減少の順位では、回転式が最も高い確率で上位となり、音波式、超音波式、その他の電動式、手動式が続きました。歯肉炎についても同様の順位でした。
比較と安全性をめぐる課題
自家発電式歯ブラシの臨床試験で比較対象となったのはナイロン毛の歯ブラシです。電動歯ブラシの技術別順位を調べたメタ分析とは、比較した製品が異なります。
試験参加者は115人で、使用期間は3カ月でした。研究チームは臨床試験で歯垢や歯肉の状態に差を確認しました。より大規模な研究で利点を確かめる必要があると、専門家は述べています。
耐久性の試験では、PVDF毛は模擬使用3カ月後も形状と電気的性質を保ちました。細胞や牛の歯を使った試験でも損傷や表面の粗さの増加は見られませんでした。これらの結果だけでは人が長期間使う際の安全性は確立せず、長期使用に向けた確認が課題です。









