bonobo, primates, apes, nature, animals

2つの群れで415件の捕獲を記録

コンゴ民主共和国のルイコタレで、野生ボノボ2群の狩猟行動を約10年間観察した研究が発表されました。記録された415件の捕獲では、雌が多くの獲物を捕らえ、地上性の有蹄類と樹上性の霊長類の両方が主な獲物でした。

観察期間は2014年2月から2023年8月までで、西群では観察日2,014日中に193件、東群では1,985日中に222件の捕獲が記録されました。捕獲の42%は有蹄類、43%は樹上性の霊長類で、残る15%は鳥類、げっ歯類などの脊椎動物でした。

有蹄類の獲物はほぼ森林にすむダイカー類でした。霊長類ではアカコロブスが137件と最も多く、霊長類の獲物の77%を占めました。この構成は、ボノボが地上の小型哺乳類だけを狩るという見方とは異なります。

雌雄で異なる捕獲の傾向

雌は非霊長類の獲物の捕獲の大半を担いました。一方、樹上性の霊長類を狩る頻度は雌雄で同程度でした。雌雄の狩猟参加には、獲物の種類による違いがあります。

雌の年齢も獲物の種類と関係していました。霊長類の狩猟は若い雌に、有蹄類の狩猟は年齢の高い雌に偏る傾向がありました。研究では、雌の年齢を考慮しながら、霊長類と有蹄類の捕獲を分けて分析しています。

霊長類または有蹄類を捕らえた351件の狩猟では、いずれも獲物の分配が続きました。観察では、獲物の捕獲後に肉を分ける行動も記録されました。

チンパンジーとの比較を見直す

チンパンジーの狩猟は、一般に雄が中心で、赤コロブスをよく狙う行動として研究されてきました。ただし、チンパンジーの狩猟頻度や獲物、協力の程度には地域差があります。西アフリカの一部では参加した個体に応じた肉の分配がみられる一方、東アフリカでは獲物を持つ雄が分配を主導する傾向が報告されています。

ボノボ社会では雌の連合が雄の攻撃を抑え、雌が食物に優先的にアクセスできるとされています。研究チームは、雌雄の優劣関係が狩猟参加に関係するなら、雌の地位が高いボノボでは雄に偏る傾向が弱まると予測しました。雌が多くの獲物を捕らえた今回の結果は、その予測と整合します。

ボノボとチンパンジーの狩猟を単純な二分法で比べることは難しくなっています。ルイコタレのボノボは樹上性の霊長類も有蹄類も狩り、雌雄の参加傾向も獲物によって異なりました。研究チームは、隣接する群れとの比較から、獲物の選択に社会的・環境的条件が関わる可能性も指摘しています。

初期人類の食生活を考える際の射程

チンパンジーは人間に近縁で、狩猟や肉の共有が確認されているため、人類進化を考える比較対象として用いられてきました。しかし、チンパンジーもボノボも人間の祖先ではなく、それぞれ独自に進化してきた現生種です。類人猿の行動だけから共通祖先の暮らしを復元する議論には、化石記録が限られることも含め、不確実さが残ります。

考古学では、動物の骨や石器の痕跡から、初期人類が狩猟をしたのか、死肉を利用したのかを区別することが論点になっています。O'Connellらは、鮮新世から更新世の遺跡の証拠が、大型有蹄類の狩猟ではなく、死肉の利用を示すという解釈を提示しました。同論文は、肉の獲得が子への食料供給を目的としたものではなく、雄の競争的な誇示に関わった可能性も論じています。

今回の研究では、現生類人猿の狩猟行動に性別や獲物、群れによる違いがみられました。この幅は、雄中心のチンパンジー像だけを初期人類のモデルにする見方を再検討する材料になります。ただし、ボノボの観察結果から初期人類の性別ごとの役割を直接明らかにすることはできず、化石や考古学的証拠とは区別して扱う必要があります。