
感情の位置関係を脳活動から調べる
研究では、感情の概念を整理する脳の仕組みを調べ、腹内側前頭前野に六方向の格子状パターンが現れることを報告しました。感情を二次元の空間として捉え、その中の移動に伴う脳活動を測定しています。
感情を配置する二つの軸は、快か不快かを表す「感情価」と、落ち着きから活性化までを表す「覚醒度」です。この二軸で感情を配置する考え方を感情円環と呼びます。たとえば満足と興奮はどちらも快ですが、覚醒度は異なります。
研究チームは、脳が感情円環上の位置関係を座標のように扱うかを検討しました。空間を移動するときに使われる格子状の符号化が、感情概念の整理にも見られるかを調べています。格子状の符号化では、移動の方向に応じて六方向の周期的な活動パターンが現れます。
18人が顔の表情と文章を評価
実験には18人が参加し、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で課題中の脳活動を測定しました。参加者は、ある感情から別の感情へ変化する顔の表情や、感情を想起させる文章の連なりを見ました。
各課題は、感情円環上で始点から終点へ移る軌跡として構成されました。参加者は刺激を見ながら感情価と覚醒度の変化を追い、どちらかの軸が上がったか、下がったか、変わらなかったかを答えました。質問される軸は回答時に示されるため、刺激を見ている間は両方の変化を追う必要がありました。
研究チームは、腹内側前頭前野(vmPFC)で六方向の周期性を持つ活動を検出しました。顔の表情と文章の両方でパターンが見られたことから、研究チームは、脳活動が個々の刺激の見た目だけでなく、感情概念どうしの関係を表している可能性を示しました。
感情概念の距離と判断の関係
感情円環上で概念どうしがどれだけ離れているかに関係する信号も、vmPFCで確認されました。この距離に関する信号は、参加者が各試行で行った感情変化の判断を予測しました。一方、格子状の信号は、参加者の明示的な行動とは独立して感情概念の尺度的な配置を反映したと報告されています。
腹内側前頭前野は、感情への反応だけを担う領域ではありません。Royらは、感覚や社会的な手がかり、長期記憶、自己についての情報を統合し、状況の意味を組み立てる役割を論じています。また、概念的な情報が感情に伴う行動や身体反応を形づくる場面で、この領域が重要になると述べています。
感情の座標表現が将来の推論や柔軟な意思決定を支える可能性があると、Ma氏とKragel氏は述べています。参加者は18人で、仕組みや役割を理解するにはさらなる研究が必要です。
抽象的な価値判断にも格子状表現
感情以外の抽象的な情報を格子状に表す例に、選択肢の価値を扱った研究があります。2024年のfMRI研究では、46人が二つの選択肢の価値変化を追い、次の時点で価値が高くなる方を予測しました。
参加者が追った価値の変化は、二次元の抽象的な価値空間上の軌跡として扱われました。課題中、空間や記憶に関わる嗅内皮質に格子状の表現が見られ、腹内側前頭前野などの領域は選択肢間の将来の価値差を追跡しました。研究チームは、認知地図が将来の価値予測を支える可能性を示しています。
感情の研究ではvmPFCに感情概念の格子状表現が見られ、価値判断の研究では嗅内皮質に価値空間の表現が見られました。どちらも抽象的な情報の関係を脳活動から調べていますが、課題と報告された脳領域は異なります。









