1ドル(約160円)のモーターと1,243対1の減速機
「Current Concept」は、1ドル(約160円)の小型ブラシ付きDCモーターでゴーカートを動かす実験を行いました。3Dプリントした複合減速機のギア比は1,243対1で、モーター1個でもカートを動かせましたが、走行速度はごく低速でした。
実験には、約1ドル(約160円)で入手した中古のゴーカートも使われました。減速機とモーターを取り付ける前に、車体に加えられていた改造を元に戻す作業も必要でした。
その後、モーターを1個から14個に増やし、それぞれのトルクを減速機へ伝える構成にしました。モーターを増やしても、減速機やチェーンで生じる損失があり、動力のすべてが車輪に届くわけではありません。
減速機は回転を遅くしてトルクを増やす
ギア比1,243対1の減速機は、理想条件では入力軸が1,243回転する間に出力軸が1回転する関係です。回転数を下げる代わりに、出力トルクは理想上、入力トルクの1,243倍になります。
実際の減速機は動力を完全には伝えられず、摩擦などによる損失が生じます。出力トルクはギア比だけで決まる理想値より小さくなり、減速機を複数段つなぐ場合は各段の効率が全体の効率に影響します。
NASAのスパーギア(平歯車)に関する解析は、歯の滑りや転がり、風損、支持ベアリングでの損失を検討しました。歯車の損失は歯面の摩擦だけではなく、歯車の形状や回転速度、負荷、潤滑油の粘度にも左右されます。
損失が積み重なると車輪に届く動力が減る
減速機で回転数を落とし、トルクを増やしても、歯車やベアリングで失われる動力は車輪に伝わりません。今回の実験では、チェーン機構の損失も加わるため、モーターが生み出した動力の一部が走行に使われません。
NASAの解析は、ジェット潤滑式の平歯車セットを対象に、歯車のかみ合いに加えて風損と支持ベアリングの損失も計算しています。解析対象では、歯車の直径や歯の細かさによって、最大負荷時と部分負荷時の効率の傾向が異なりました。
この解析の効率値を、3Dプリント製の減速機や今回のチェーン機構にそのまま当てはめることはできません。実験で走行が遅かった背景には、回転数とトルクの変換に加え、動力伝達経路で生じる損失がありました。
BLDCモーターを使う場合の違い
今回の実験に使われたのは、ブラシと機械式の整流子で電流を切り替えるブラシ付きDCモーターです。基本的な速度制御は電圧調整で行えますが、ブラシの摩耗が保守上の要素になります。
BLDCモーターはブラシを使わず、コントローラーが回転子の位置に応じて電流を切り替えます。ブラシ付きモーターよりコントローラーが複雑になりますが、一般にBLDCの効率は90〜95%、ブラシ付きはピーク時に75〜85%とされています。
別の電動ゴーカート設計では、出力5キロワット、48ボルト、毎分3,000回転のBLDCモーターと、48ボルト・35アンペア時のリチウムイオン電池を組み合わせています。これは設計例であり、今回の小型モーター14個を使った構成とは異なる駆動系です。
モーターの数だけでは決まらない走行性能
ゴーカートの走行には、モーターの出力だけでなく、必要な回転数とトルクに合うギア比や、伝達経路の効率も関わります。










