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出典: Nature

光でゼラチン足場の内部を加工

光を当てると分解するゼラチンの足場を作り、近赤外レーザーによる2光子励起で内部まで立体的に加工する手法が報告されました。加工領域に沿って細胞の向きや形を変えられ、細胞を含む三次元環境を局所的に設計できます。

研究では、ゼラチンに光分解性のo-ニトロベンジルアクリレート(PDA)を組み込んだGelatin-PDAハイドロゲルを使いました。ハイドロゲルは水分を含む網目状の材料で、細胞の足場として使われます。光を当てると網目がゆるみ、照射部分を分解できます。

2光子励起は、長波長の光子を同時に2個吸収させ、焦点付近に限って高エネルギー状態を作る現象です。研究ではこの性質を利用し、ゲルの表面だけでなく内部にも照射して、二次元と三次元のパターンを形成しました。

細胞の配向と伸び方を操作

作製したパターンに沿って、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の向きを制御しました。間葉系幹細胞は骨髄に由来し、複数の細胞種へ分化する能力を持つ細胞です。今回の結果は、足場の形状を局所的に変えると細胞の配向を調整できることを示しています。

マウス胎仔線維芽細胞では、細胞が集まった球状の塊であるスフェロイドに照射し、伸長方向を変えました。足場の表面と内部の両方を加工することで、三次元の細胞足場内で伸長方向を精密に操作できたと報告されています。

近赤外の2光子パターニングではフェムト秒パルスレーザーを使い、反応を焦点面に閉じ込めることで、深さ方向の分解能を2〜3マイクロメートルに高められるとされています。別のハイドロゲル研究では、増感剤を加えて2光子反応を強め、低い光量でタンパク質を配置できました。タンパク質は三次元の指定領域に配置され、x・y方向には厚さ1マイクロメートルの構造も作製されています。

1光子照射との違いと適用範囲

この方法は、厚みのあるゲルの内部でも単一細胞レベルの操作が可能な手法として、研究の要旨で説明されています。

今回の研究では、紫外線などによる1光子照射と比べた到達深度や細胞への影響を数値で比較していません。

光を使うハイドロゲル加工全般では、照射する場所と時間を制御し、三次元材料の性質を調整する研究が進められています。光の量によって材料の変化の程度を調節する考え方も、細胞を含む足場の設計に使われています。

o-ニトロベンジル基による切断

PDAに含まれるo-ニトロベンジル基は、光で切断される構造です。ゼラチンメタクリロイル系ハイドロゲルに同じ種類の基を含むリンカーを組み込んだ別の研究では、紫外線を当ててリンカーを切断し、結合させたタンパク質を放出できました。

その研究では、ビオチン化した光切断性マクロマーをゲルに組み込み、ストレプトアビジン結合型の西洋ワサビペルオキシダーゼを固定しました。固定量はリンカーを含まないゲルより多く、紫外線照射後にはタンパク質複合体を放出できました。

液体クロマトグラフィー質量分析で、リンカー溶液に生じる主な切断生成物と反応速度も調べられています。また、37度ではリンカーの加水分解も進みました。今回のGelatin-PDA足場とは異なる実験系ですが、ゼラチン系材料でo-ニトロベンジル系の光切断をタンパク質の固定・放出に使った例です。