Ethan A. Crawford氏らの研究チームは、3Dプリントで製作したフィルターを20層重ね、水中のマイクロプラスチックとナノプラスチックを90%除去する試作結果を得ました。微細な穴を直接印刷する代わりに、樹脂に混ぜた添加剤を温水で取り除き、粒子を捕らえる多孔質の表面を作る方法です。研究チームは、装置の改良と再使用の可能性を今後の検討課題に挙げています。

添加剤を80℃の水で取り除き、微細な穴を作る

研究チームの手法は、学術誌『Separation and Purification Technology』に掲載されました。フィルターには、樹脂の一種であるポリ乳酸(PLA)と、造形後に取り除く添加剤としてポリエチレングリコール(PEG)を使います。水を通す多層構造をPLAで造形し、その内部に形成されたPEGの球状部分を除去する仕組みです。

材料を溶かして積み重ねるFDM方式の3Dプリントでは、このろ過に必要な微細な穴を直接作れません。そこで、造形したフィルターを80℃の水で処理し、PEGを取り除いた跡を穴として残します。この処理で、細かい粒子を捕らえる表面が形成されます。

研究チームが調べた試料のうち、「PLA-PEG10」はPLAの構造を維持しながら、最も良好な多孔質構造を示しました。このフィルターを20層使った構成で、90%のろ過効率を達成しています。

微小な粒子を扱うための寸法と測定

今回の除去対象に含まれるマイクロプラスチックは、5mm未満の合成高分子の粒子です。環境中では100マイクロメートル未満の粒子も観測されています。

微小プラスチックを3Dプリントで扱う別の研究では、ドレスデンの研究チームが、分析の基準となる粒子を製作しました。改造した市販プリンターと開口径80、100、200、400マイクロメートルのノズルを使い、樹脂の種類とノズル径に応じて、直径224〜1,349マイクロメートルの粒子を得ています。

この粒子製作では、サイズや形状に加えて、粒子数を正確に指定できます。一方、得られた粒子は、環境中で観測される100マイクロメートル未満の粒子より大きく、研究チームはさらなる小型化を課題に挙げています。フィルターの微細な穴は添加剤の除去で作るのに対し、基準粒子はノズルから樹脂を押し出して作ります。

既存の膜ろ過では圧力と目詰まりが運用課題

微小プラスチックの除去には、限外ろ過(UF)や逆浸透(RO)など、膜を通して水と不要な成分を分離する技術も使われています。膜の選択や他の処理との組み合わせによって、90〜99%を超える除去効率の報告があり、孔の大きさ、運転圧力、粒子の形状や材質が処理への適性に関わります。

圧力を利用する膜分離では、UFは低圧側、ROは高圧側の方式に分類されます。UFでは膜の穴の内部への吸着や閉塞が起きやすく、緻密な構造を持つROでは膜表面への付着が目詰まりの主な形です。微小プラスチックを除去する膜システムでは、エネルギー需要や複雑な目詰まりの仕組みが、実際の運用を妨げる要因になります。

目詰まりは、膜の表面や内部に有機物、無機物、微生物などが蓄積する現象で、水の流れに対する抵抗を増やし、膜の性能や寿命に影響します。表面の付着物は水流の調整や薬品洗浄で抑えられる場合がありますが、水の組成や膜との相互作用によっては、表面と内部の両方で不可逆的な汚れが生じます。

PLAは水温と接触期間によって性質が変わる

試作フィルターに使うPLAは、水によって分子鎖が切れる加水分解を起こし、その進行は温度やpHに左右されます。PLAが軟化し始めるガラス転移温度は55〜60℃で、それを超えると軟化や反りが生じます。今回、PEGの除去に用いる80℃の水は、この温度域より高温です。

PLAを49日間水に浸した実験では、残存質量は37℃で88%、60℃で47%、80℃で4%でした。また、37℃、pH10のアルカリ性条件で25日間処理した実験では、引張強度が40%低下しています。これらはPLAの浸漬実験の結果であり、今回の試作フィルターのろ過試験とは別の条件です。