
Blue Originは大型ロケット「ニューグレン」に第3段「GS3」を追加し、静止軌道への衛星投入や月・深宇宙ミッションに対応する計画を発表しました。GS3を使う政府顧客向け月近傍ミッションは契約済みで、2028年の打ち上げを目指します。同社は新型ブースターエンジン「Northstar」の開発も発表しました。
GS3が加える軌道投入能力
ニューグレンは現在、再使用可能な第1段と第2段で構成されています。標準型の「7x2」は全高約98メートルで、静止トランスファ軌道(GTO)へ最大13メートルトン、低軌道へ最大45メートルトンを運べます。第1段にはBE-4エンジン7基、第2段にはBE-3Uエンジン2基を搭載します。
GS3は、衛星群を静止軌道へ直接投入できるほか、月や深宇宙へ向かう大型の科学・探査ミッションにも対応する第3段です。静止軌道(GEO)への投入能力は、9x4型で最大14メートルトン、7x2型で最大8メートルトンです。月遷移軌道(TLI)への投入能力は、それぞれ最大20メートルトンと最大10メートルトンです。
GS3は、複数のペイロードの放出、長時間の軌道上待機、複数回の精密なエンジン噴射に対応する設計です。既存のペイロードアダプターとフェアリングを使い、段を機体間の接続部に組み込んで、顧客のペイロード空間を保ちます。この設計により、GEOや中軌道への直接投入から、月へ向かう軌道への投入まで、ミッションに応じた運用ができます。
月遷移向けに使うBE-7
GS3を駆動するのは、Blue Originが月着陸船「Blue Moon」向けに開発したBE-7エンジンです。推進剤には液体水素と液体酸素を使い、燃焼サイクルはデュアルエキスパンダー方式です。推力は最大約44.5キロニュートンで、約8.9キロニュートンまで絞れます。
Blue Originは、BE-7を高い比推力と深い推力調整能力を備え、大型ペイロードを月へ運ぶ用途に向けたエンジンとしています。GS3では、長時間の作動や複数回の噴射、複雑な機動に対応するエンジンとして使います。Blue Originによると、TLIへ大きなペイロードを直接投入すれば月までの移動時間を短縮でき、軌道上での運用に使う推進剤も残せます。
Blue Originによると、GS3を使う月面着陸ミッションで、Blue Moonを打ち上げる必要はありません。同社は、GS3が月周辺での継続的な運用を支える能力を持つとしています。政府顧客向けの月近傍ミッションは、2028年を目標とするGS3の初期用途として発表されました。
水素タンクの加圧試験を実施
Blue Originはテキサス州の試験施設で、GS3用の複合材製液体水素タンクを試験しました。飛行用の流体系統を使って最大予想作動圧力(MEOP)の100%まで2.5時間加圧し、GS3のミッションに必要な時間を上回ったとしています。
タンクはMEOPの150%まで10分間加圧する試験にも成功しました。Blue Originは、このタンクが宇宙で飛行する初の複合材製液体水素タンクになる見込みだとしています。この試験では、長時間の運用や高エネルギー軌道への投入に使う段のタンクを対象に、運用圧力を超える条件も確認しました。
GS3はニューグレンの既存ハードウェアを活用し、機体の顧客向けインターフェースを変えずに性能を拡張する設計です。既存の流体系統、機械系統、アビオニクスも使います。Blue Originは、GS3を政府や商業顧客の高エネルギーミッションに向けて開発しています。
新型ブースターエンジンNorthstar
Blue Originは同日、第1段用エンジンNorthstarの開発も発表しました。液体酸素と液化天然ガスを推進剤に使い、推力は約3,181キロニュートンです。同じ推進剤を使う既存のBE-4と比べ、Northstarは質量を30%、部品数を50%減らしながら、推力を約2,846キロニュートンから約3,181キロニュートンに高めるとBlue Originは述べています。
Northstarは再使用を想定した酸素過剰型二段燃焼サイクルのエンジンです。Blue Originによると、エンジン質量の65%超に積層造形部品を使います。部品の削減と軽量化には、部品を組み合わせたりなくしたりする同社の積層造形技術を活用します。同社は、製造工程の改善により組み立てを1日未満に短縮でき、開発承認から開発試験まで11カ月だったとしています。
Blue OriginはNorthstarをニューグレンのブースター向けエンジンとして発表しましたが、初飛行の時期は公表していません。










