
中国の調査船、海底インフラ周辺で活動
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、47カ国の200隻超の調査船を分析し、中国船が重要インフラの近くで活動する時間の割合は、他国の船より統計的に有意に高かったと報告しました。 調査期間は2020年1月から2025年12月9日までで、中国船は直近5年間のうち4年間、重要インフラに近い公海上で活動する船の上位20%に入りました。
活動は2024年に目立って増えました。CSISは、分析対象となった中国船の動きを自動船舶識別装置(AIS)の追跡データなどで調べ、海底ケーブル周辺で繰り返される測量のような航行を確認しています。
例として、調査船「向陽紅06」は2024年7月から10月にかけて、米国とオーストラリア、インドネシア、シンガポール、グアムなどを結ぶ3本の海底ケーブル付近で活動しました。 CSISは「向陽紅06」と「科学号」の事例を挙げ、両船が戦略上重要なケーブル網の近くで調査に似た航行を繰り返したとしています。
音響測量で海底を面的に捉える
複数の音響ビームを同時に海底へ向けるマルチビーム測深は、船の進行に合わせて広い範囲の水深を測り、海底地形を三次元データとして記録する技術です。 シングルビーム測深が海底を線状に調べるのに対し、マルチビームは面として捉えます。
水産庁の測量マニュアルは、船の左右に音響ビームを照射し、多数の地点の水深をまとめて測る方式をスワス測深と定義しています。 マルチビームでは測深点の集合から海底の起伏を表現し、取得した位置と水深のデータを三次元点群として扱います。 日本ジタンは、用途に応じて海底地形を三次元表示し、断面図や土量計算を作成する手法を説明しています。
海底の反射強度を画像化するサイドスキャンソナーは、海底面の状態や底質を詳しく調べる装置です。 水深を測る装置ではありませんが、既設ケーブルのルート調査や海底の落下物調査に使われます。 音波探査をマルチビーム測深やサイドスキャンと併用すると、海底下の地層分布も調べられます。
海底データは軍事計画にも転用され得る
CSISは、海底地形や水温、塩分、海流のデータが潜水艦の運用環境を分析する材料になり得ると指摘しています。 米海軍当局者は、こうした海洋データの収集が、人民解放軍海軍によるソナー性能の最適化や長距離の水中監視を支えると議会で証言しました。
海底地形の測量は、作戦環境の分析に使う情報を集める活動の一部にもなります。 CSISによると、中国の調査船は海底地形の地図化に加え、水中グライダーや観測フロートを使い、広い海域でデータを集めています。 これらのデータは、将来の軍事作戦に活用される可能性があると同研究所は評価しています。
民間の学術調査船は、軍用船とは異なる立場で航行しながら、国家の情報収集に利用される余地があります。 CSISは、中国の調査船による活動が、米国と同盟国の通信や海軍作戦に関わる海底インフラにとって戦略上のリスクになると論じています。 調査船の航跡だけで軍事目的を断定するのではなく、測量技術が民生と軍事の双方に使える性質を踏まえた分析です。
損傷時の復旧は修理船の到着後も続く
米海軍のマイク・ブルックス少将によると、光ファイバー海底ケーブルに対応する修理船は世界に約65隻あり、そのうち約20隻が主に修理任務を担います。 2024年のケーブル修理は、損傷発生から作業実施まで平均51日かかりました。
修理船の到着後、深さ1,500メートル未満の海域では、遠隔操作型無人潜水機(ROV)でケーブルを引き上げ、修理を通常1〜3日で行います。 深海ではグラプネルと呼ばれる回収器具でケーブルを引き上げ、修理に1週間以上かかる場合があります。 船の手配や天候、作業許可、ケーブルの深さ、修理地点までの距離が所要時間に影響します。
国際ケーブル・シップ社の安楽孝明社長は、2011年の東日本大震災で海底ケーブルの障害が20カ所以上確認され、同社の船が11カ所を修理するのに150日余りを要したと記しています。 同社のケーブル船には、修理地点に船をとどめるダイナミックポジショニングシステムや、水中作業用ロボットが搭載されています。 海底ケーブルは国際通信の99%以上を担っており、修理船の配備と復旧能力は通信網を支える要素です。










