F-22のステルス塗装は材料だけで再現できない
出典: af.mil

F-22ラプターのレーダー吸収材(RAM)は、組成や塗り方が機密で、機体の設計や整備方法とも結び付いています。一方、F-22のRAMは運用中も改良されており、補修作業の効率化も進められています。

RAMは機体のレーダー反射を抑える材料

レーダー吸収材は、機体に当たったレーダー波を吸収したり弱めたりする材料です。ポリマーや複合材、磁性・導電性粒子などを用い、機体表面に塗るほか、シート状に貼ったり、複合材の外皮に組み込んだりします。

ステルス性はRAMだけで決まるものではありません。機体表面の向きや曲面、縁の配置を工夫すると、レーダー波が送信元へ反射しにくくなります。吸気口やダクトの空洞を遮蔽する設計も、機体内部の反射を抑える手段です。

兵装を機内に搭載すれば、外部に露出する兵器や取付部による反射を抑えられます。F-22では、機体形状、内部兵装、エンジン吸気口の設計、排熱管理、電子戦などが低被探知性に関わります。そのため、塗装だけを模倣しても、機体全体の設計を再現したことにはなりません。

吸気口の形状と補修にも精度が要る

戦闘機のエンジンは、レーダー反射の大きな要因の一つです。S字型の吸気口は、レーダー波がエンジンへ直接届いて反射するのを避ける設計として研究されています。

2021年のシミュレーション研究では、正面から電波を当てた場合、S字型吸気口によってエンジンのレーダー反射断面積が3ギガヘルツ帯で約10〜12デシベル平方メートル、10ギガヘルツ帯で約16デシベル平方メートル低下しました。ただし、この低下だけでは無線周波数ステルスの基準に達しないと研究は指摘しています。

効果は電波の入射角によっても変わります。同じ研究では、特定の角度から電波を当てた場合、反射の低減は正面より小さくなりました。機体形状や吸気口の設計は、あらゆる方向からの探知を一律に防ぐものではありません。

F-22のRAMは運用しながら改良

F-22のRAMは1990年代の設計を基礎としますが、当初の仕様のままではありません。米空軍は運用期間中に複数回改良しており、現在の包括的な中期改修でも、より耐久性が高く整備費を抑えられる新世代のRAMが導入されるとみられています。

F-22の塗装には定期的な補修が必要です。ロッキード・マーティンは2017年、ジョージア州マリエッタに設けた吸気口塗装補修施設で最初の機体の作業を終え、米空軍へ返しました。同社は計12機の作業を受注していました。

米空軍は、吸気口内の塗装補修を支援するロボットの開発も進めました。従来は整備員が狭い吸気口の中に入り、手作業で塗装を剥がして塗り直していました。ロボットには、作業時間と整備員の狭所作業を減らし、塗装の仕上がりを安定させる狙いがあります。

ロボット補修は塗装の適用工程を支援

米空軍の取り組みでは、ロボットが長いカーボンファイバー製アームで吸気ダクトの奥まで届き、塗料を塗布します。塗装を剥がす工程は手作業のままで、自動化の認定も済んでいませんでした。

開発チームは、地上に置いた訓練用機体で、機体の搬入・位置決めからロボットによる塗布までを検証しました。その後、噴霧試験の結果を分析し、整備員を訓練してから実機への適用を判断する段取りでした。

当時、ロボット導入で補修時間がどれだけ短くなるかは分かっていませんでした。工程を大きく変えることで一時的に時間がかかる可能性もあり、米空軍は作業の一貫性や整備員の負担軽減とともに、補修ペースを維持できるかを検討していました。

高い低被探知性には整備負担も伴う

F-22のRAMは、後発のF-35のものより整備負担が大きいとされています。F-35では材料の耐久性や取り外しやすさが改良され、空母運用でさらされる塩分を含む空気に耐える設計です。一方、F-22のRAMも改修を重ねており、初期のままではありません。

低被探知性は機体を不可視にするものではなく、探知や追跡、攻撃を完全に防ぐものでもありません。ステルス機の設計には兵装の機内搭載などの制約があり、塗装の維持にも継続的な整備が必要です。

F-22の機体設計は1990年代を基礎とするため、パネルの継ぎ目や縁などに改修上の制約があります。米空軍は2040年代にF-22を次世代のF-47で置き換える計画を持ち、F-35は2060年代以降も運用される見通しです。