
F-4ファントムIIは、1958年に初飛行した戦闘機で、最高速度はマッハ2.23です。 高度11kmの標準大気で換算すると約2,370km/hに相当します。 高高度での迎撃を重視した機体ですが、実戦では近距離空戦への対応が課題となり、機関砲の搭載や翼の改良が進められました。

マッハ2.23の時速換算は気温で変わります
マッハ数は、速度をその場所の音速で割った比率で、マッハ2.23は音速の2.23倍を意味します。 音速は絶対温度の平方根に比例するため、同じマッハ数でも、飛行する空気の温度によって時速換算の値が異なります。
国際標準大気(ISA)は、高度ごとの気温や気圧などを定めた基準モデルです。 高度11kmでは気温がマイナス56.5℃、音速が295.1m/sとなり、この音速に2.23と、秒速を時速へ換算する3.6を掛けると、約2,370km/hになります。 これは標準大気での換算値であり、実際の大気の温度は天候や季節などによって変わります。
F-4の最大上昇率は毎分約41,000フィート(12,496m)で、1961年には66,443フィート(20,251m)を超える高度で持続飛行高度の記録を樹立しました。 飛行性能に関する記録は計16件です。
高高度の迎撃を支えた双発J79エンジン
F-4は、敵機を迎え撃つ迎撃機として、米海軍の空母から運用し、マッハ2を超える速度を出すことを目指して設計されました。 最大離陸重量が27トンを超える機体に、ゼネラル・エレクトリック製のJ79ターボジェットエンジンを2基搭載しています。
J79は、1950年代後半から1960年代の超音速軍用機に広く使われたエンジンで、F-4EにはJ79-GE-17Aが搭載されました。 アフターバーナーは、排気に燃料を加えて再燃焼させ、推力を増す仕組みです。 使用時には排気口が開き、増加した高温のガスに対応します。
推力の増加に伴い、燃料消費も増えます。 J79の試験を行ったAgentJayZ氏によると、J79単体の試験での燃料消費は、アフターバーナーを使わない最大出力時が毎分約132〜151リットル、使用時が毎分約321〜340リットルでした。
ベトナム戦争で近距離空戦への改良が進みました
F-4は、高高度でレーダーにより敵機を捉え、目視できない距離からミサイルで交戦する運用を想定していました。 当初は近距離用の機関砲を備えておらず、主な兵装は空対空・空対地ミサイルや爆弾でした。
ベトナム戦争では、レーダーによる敵味方の識別やミサイルの命中精度が問題となり、近距離での空戦への対応が必要になりました。 小型のMiG-21などとの交戦では機動性に課題があり、搭乗員の近距離空戦訓練も不足していました。 J79の濃い排気煙も、敵から機体を見つけやすくする弱点でした。
改良ではまず外付けの機関砲ポッドが追加され、その後、F-4Eに機内搭載のガトリング砲が導入されました。 F-4Eは主翼前縁の可動装置であるスラットも採用し、最高速度が下がる一方、迎角が大きい状態での機動性が改善しました。 迎角は、翼と流れてくる空気との角度を指します。 後のF-4Sでは排気煙を抑えたエンジンが採用され、搭乗員の近距離空戦訓練も強化されました。
F-35やF/A-18とは担う任務と設計が異なります
F-4の最高速度は、F-35やF/A-18を上回ります。 一方、F-35は、レーダーに捉えられにくくするステルス性を持つ多用途戦闘機で、コンピューターによる情報統合や対地攻撃能力を備えています。 通常離着陸型、短距離離陸・垂直着陸型、空母で運用する艦上型の3種類があり、高高度迎撃を出発点としたF-4とは設計の重点が異なります。
F/A-18も、空対空戦闘と対地攻撃の両方を担う艦上機です。 艦隊防空、迎撃、護衛、近接航空支援などに対応し、低速での操縦性を改善する翼を採用しています。 マッハ2への到達を要求されなかったため、空気をエンジンへ取り込む吸気口には、複雑な可動式ではなく固定式が使われています。
F-4の後に開発されたF-15イーグルは、空中戦で優位を確保する制空戦闘機として設計されました。 最高速度だけでなく、速度や高度に関わるエネルギーと機動性を評価する考え方が採用され、強力なエンジンや大きな操縦翼面を備えながら、最高速度はマッハ2.5に達しました。
F-4は1960年12月に米海軍で運用を開始し、1962年に海兵隊、1963年に空軍へと導入が広がりました。 日本、英国以外の欧州諸国、中東などにも供給され、米海軍は1986年、海兵隊は1992年、空軍は1997年まで実任務に使用しました。 その後も標的用無人機として使われ、米軍の最後のF-4が退役したのは2016年です。








