米国によるイランの海上封鎖が続くなか、イラン産石油を積んだタンカー少なくとも50隻が同国周辺に滞留しています。非営利の政策団体United Against Nuclear Iran(UANI)が10月5日に示した集計では、隻数は2カ月前からほぼ変わっていません。9月の原油積み込み量も、船舶追跡に基づく暫定推計ではゼロとなり、2月の開戦以来初めて積み込みが途絶えました。

積載船の滞留と空船の帰港見合わせ

UANIによると、イラン周辺で滞留するタンカーの積み荷は主に原油で、石油製品や液化石油ガス(LPG)も含まれます。ペルシャ湾内では、イランの主要な石油輸出拠点であるカーグ島の東側に少なくとも11隻、さらに南側に5隻の積載タンカーが停泊しています。UANIは10月5日、カーグ島で積み込み中のタンカーを確認しなかったとしています。

UANIによると、空船も米国の封鎖を理由にイランの港へ戻らず、インド太平洋各地の停泊地で待機しています。イラン船籍の船はスリランカ沖に20隻、オマーン沖に1隻がとどまっています。

米軍の集計では、計130隻が進路を変更させられました。スコット・ベッセント米財務長官はAxiosのインタビューで、今週中にイランの石油が海上に存在しない状態になるとの見通しを示し、それが歴史上初めてになると述べました。

封鎖はイランの港への出入りを対象に

米中央軍は4月、イランの港湾・沿岸地域へ出入りする船舶を、船籍を問わず封鎖の対象にすると説明しました。対象にはペルシャ湾とオマーン湾にあるすべてのイランの港が含まれます。一方、イラン以外の港へ向かう船や、そこから来る船については、ホルムズ海峡を通過する航行の自由を妨げないとしました。

この封鎖は、石油取引に関わる事業者への経済制裁に加えて、船そのものの移動に介入する措置です。2024年4月に成立した米国のSHIP法は、イラン産石油の取引に関与すると知りながら参加する外国の船主、港湾運営者、製油所などを制裁の対象とする仕組みを設けました。これに対し、米中央軍が示した封鎖の対象は、イランの港へ出入りするすべての国の船舶です。

米国防総省は4月、国籍不明船「M/Tティファニ」に対して、船内を調べる臨検、海上での阻止、乗船を実施したと明らかにしました。同船は制裁対象の石油タンカーで、海上封鎖の開始後、こうした介入は初めてでした。

戦争前の輸出は日量158万バレル

米エネルギー情報局(EIA)の推計では、イランの2025年の原油・コンデンセート輸出は平均で日量158万バレルでした。コンデンセートは、天然ガスの生産に伴って得られる液体の炭化水素です。原油とコンデンセートの輸出収入は、2024年の490億ドルに対し、2025年は480億ドルと推計されています。

この戦争前の輸出規模に対し、9月の原油積み込み量は、Bloombergがまとめた船舶追跡に基づく暫定推計でゼロとなりました。積み込み量と海上に残る積載船の隻数は別の指標で、UANIは10月時点でも石油を積んだ多数の船がイラン周辺にとどまっているとしています。

位置情報の停止や偽装が追跡を難しくする

AIS(船舶自動識別装置)は船の位置や動きを追跡する仕組みですが、イラン関連のタンカーでは、発信停止や偽の位置情報の送信が行われてきました。

船舶追跡会社Starboard Maritime Intelligenceが提供したデータと衛星レーダー画像では、タンカー「Ocean Guardian」がAISで示した位置に、該当する船影がありませんでした。同船はその後「Danube」に改名しましたが、船に生涯付与される識別番号であるIMO番号は同じでした。追跡データには陸上を通過したように見える動きもあります。

TankerTrackers.comによると、2025年にはイラン国営タンカー会社(NITC)の船籍で運航する39隻のうち20〜25隻が、正確なAIS情報を発信する状態になりました。同社の船団はそれ以前、位置を偽るよりもAISの発信を止める方法を主に用いていました。

EIAも、イラン産石油を運ぶ船の一覧について、識別装置の停止、洋上での船同士の積み替え、積み荷の原産地表示の変更などにより、網羅できていない可能性を指摘しています。位置情報の偽装や停止がある船の追跡には、衛星画像との照合などが使われています。