Close-up of a capacitor with red and yellow cables connected inside a translucent cover.
出典: helionenergy.com

Helionは核融合発電所向けの半導体と電力制御機器を開発・製造するため、米国内の生産能力を整える計画です。機器を通る電力の損失を抑え、発電システムの出力を高めることを目指します。

電力損失の低減が発電出力を左右

Helionによると、現在使われている半導体や電力制御機器では、流れる電力の約5〜10%が失われます。デビッド・カートリー最高経営責任者は、この損失を半減できれば核融合システムの出力が2倍になると述べました。

同社の発電方式では、核融合反応で生じたエネルギーを熱に変えて蒸気タービンを回すのではなく、電気として直接回収します。そのため、電力を高速で扱う半導体の効率がシステム全体の発電量に関わります。

Helionは、高電圧のパルス電力を扱う半導体を開発しています。今回の開発・製造能力は、核融合発電に使う機器の改良を目指すとともに、米国内でこの種の半導体を供給する体制を整える計画です。

米国内に半導体の開発・製造ライン

Helionは米商務省のCHIPS法関連の資金を活用し、半導体モジュールの自動組み立て、パッケージング、試験の能力を整える計画です。ワシントン州に新しい生産ラインを設けます。

同社は別途、非公開の投資家から5,000万ドル(約79億円)の出資を受けたと発表しました。連邦資金のうち1億ドル(約160億円)超はワシントン州での半導体・先端パッケージング研究開発に、約8,000万ドル(約130億円)はバーモント州でGlobalFoundriesと進める半導体の設計や工程開発などに充てる予定です。

高電圧・パルス半導体は、核融合発電のほか、製造業、排水処理、医療、防衛などでも使われます。Helionは発電所向けの供給を主な目的にしていますが、開発対象は複数の産業で使われる種類の半導体です。

Orionの稼働後に技術を反映

Helionは、建設中の初号発電所Orionを2028年までに完成させ、Microsoftへ送電する計画です。今回の研究開発の成果はOrionの稼働には間に合わず、後続の発電所で効率を高めることを目指します。

連邦契約の交渉には数カ月かかる場合があり、資金を得てもすぐに設計へ反映できるわけではありません。Helionは、後続設備で電力変換の効率を改善し、電力市場での競争力を高める考えです。

同社の核融合装置は、燃料をプラズマにし、磁場で加速・圧縮して反応を起こします。装置内の電磁石や蓄電器にエネルギーを戻す工程にも電力制御機器を使うため、半導体の開発は発電所の製造だけでなく、エネルギー回収にも関わります。

熱を介さず磁場から電流を回収

Helionの方式では、重水素とヘリウム3をプラズマにし、磁場で閉じ込めた状態から反対方向に加速します。2つのプラズマが中央で衝突すると、磁場でさらに圧縮され、温度が1億度を超えます。

核融合後にプラズマが膨張すると、周囲の磁場を押し返します。この磁場の変化によって電流が誘導され、電気として直接回収されます。発電のために核融合の熱で水を蒸気にしてタービンを回す工程はありません。

Helionは、電力を直接回収することでシステムの複雑さや設備費を抑える設計を掲げています。この方式では、電力を投入する側と回収する側の双方で効率を高める必要があり、半導体の損失を減らす取り組みも発電量の改善を目指す開発の一部です。