
L3Harrisは2026年9月24日、米宇宙開発庁(SDA)のミサイル追跡衛星計画「Tracking Layer Tranche 3(TRKT3)」で、予備設計審査を完了しました。対象は18機で、赤外線によるミサイル探知や軌道上のデータ処理などを含むシステムの基準設計が固まりました。衛星の追跡情報を航空機へ届ける構想はありますが、設計審査の完了は、パイロットの画面での利用や衛星網の運用開始を意味しません。

TRKT3の設計審査で固まった範囲
L3Harrisによると、審査では地上設備、ネットワーク、衛星、通信、赤外線ペイロードを組み合わせた任務システムの基準設計を確認しました。衛星上のデータ処理と、脅威をリアルタイムで検出するアルゴリズムも計画に含まれます。

同社は2025年12月、SDAからTRKT3の衛星18機を設計・製造する契約を受けています。

L3Harrisは、衛星が軌道に投入された後、SDAの「Proliferated Warfighter Space Architecture(PWSA)」の一部として、ほぼ継続的な世界規模のミサイル警戒・追跡を担うと説明しています。

追跡衛星から航空機へ届く情報
SDAの構想では、Tracking Layerが赤外線センサーでミサイルを警戒・追跡し、Transport Layerが戦闘部隊向けの低遅延通信を担います。両者は役割が異なり、追跡データを通信網に載せて運ぶことで、センサーから利用者までの経路を構成します。

SDAはTransport Layerについて、低軌道の衛星を光通信リンクで相互接続し、地上や戦闘部隊へ軍用データを届ける構想を示しています。ネットワークは衛星間で経路を組み替え、Link 16などとの連携も想定されています。
Tracking Layerの衛星には赤外線センサーと、衛星間・衛星地上間の光通信端末が搭載されます。SDAは別の実証計画で、宇宙、航空機、地上を結ぶ光通信端末の試験も掲げています。追跡情報を航空機へ届けるには、衛星による検知に加え、軌道上の通信、地上側の処理、航空機側との接続が関わります。
Link 16とMADLが担う通信
Link 16は米国防総省とNATOが用いる戦術データリンクで、複数の周波数を使う時分割多元接続方式で通信します。通信は見通し線内で行われ、同マニュアルは安全な通信と耐妨害性を備えたデータリンクと説明しています。
一方、F-35のMADL(多機能先進データリンク)は、F-35などMADL対応機の間で情報を共有し、低被探知性を保つために使われます。米海軍大学院の報告書によると、MADLの情報をLink 16で送ると、低被探知性・低傍受性は維持されません。
MADLに対応しない機体や艦艇へ情報を渡す方法として、別の無線機を介して中継する案や、MADL対応機がLink 16で転送する運用案が検討されてきました。同報告書は、2016年にF-35BがMADL情報を地上局へ送り、艦艇を模擬した施設と連携した実証も記録しています。衛星追跡情報を既存の航空機・艦艇へ配信する場合も、追跡データの生成後、それぞれの端末に合う通信へ受け渡す必要があります。
コックピットへの反映は別の段階
Simple Flyingは、将来、衛星追跡情報を航空機の表示装置に組み込めば、脅威の位置や進路を把握し、搭載レーダーに頼らずに対応できるという運用構想を紹介しています。L3Harrisの設計審査発表が扱ったのは衛星システムの設計で、具体的なコックピット表示機能ではありません。
SDAはTracking Layerを主にミサイル警戒・追跡に、Transport Layerをデータ通信に位置付けています。
航空機の無線改修やデータ統合、表示方法を含む実運用には、衛星網以外の要素も関わります。










