Ledger HW.1 (29165329233)
写真: Gareth Halfacree from Bradford, UK / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons

Ledgerは、販売代理店CryptoBilisを通じて流通した端末の一部が改造され、利用者の暗号資産が流出した問題について、影響を受けた利用者の端末1台に不正なハードウェア部品があったと確認しました。 同社は利用者への連絡と当局との調整を進めています。端末の改造時期や、確認された部品の詳細は明らかになっていません。

CryptoBilis経由の端末で流出報告

Ledgerは10月9日、暗号資産の損失を訴える利用者の報告を受けて調査を始め、CryptoBilisにLedger製品の販売と発送を止めるよう求めました。 翌日には、少なくとも1台でハードウェアの改造を確認したと説明しています。

同社はその後、予期しない資産流出の報告はいずれもCryptoBilis経由で販売された端末に関係し、影響の規模は「限定的」だと説明しました。 一方で、改造された端末の台数や、個々の流出との因果関係は示していません。

Ledgerは、CryptoBilisで購入した未設定の端末について、セットアップを始めないよう案内しました。 すでに設定を済ませた利用者には、新しいリカバリーフレーズを用意した別のLedger端末へ資産を移すことを検討するよう勧めています。

Ledger Xで見つかった盗聴用部品

研究者らはLedger Xの改造例を調べ、画面表示やボタン操作を読み取り、携帯電話回線で情報を送る部品を報告しました。 これらはCryptoBilis経由の流出に使われた端末と同一だと確認されたものではありません。

Tibane Labsが調べた2台のうち、1台では元のバッテリーを小型のものに交換し、追加部品の電源にしていました。 もう1台では、OLED画面の下にある緩衝材のスペースへ回路を収め、元のバッテリーを残していました。

両方の端末から、マイクロコントローラーとeSIM、LTE通信モジュールが見つかりました。 研究者らは、アンテナ線の位置や、部品の型番を隠すために表面の刻印が削られていたことも報告しています。 Ledgerは、販売代理店から購入した製品には偽造品や改造品のリスクが高まるとして、正規販売経路の利用を呼びかけました。

Genuine Checkが証明する範囲

Ledger OSは工場で端末固有の公開鍵と秘密鍵を生成します。 Ledgerはその公開鍵に署名した証明書を端末に保存し、端末がLedger Walletアプリに接続すると、証明書を使って真正性を確かめます。

この仕組みは、端末のファームウェアが改変された複製品を検出するためのものです。 Genuine CheckはSecure Element(暗号鍵を扱う保護領域)の真正性を検証しますが、その部品が正規のまま残っている場合、別の盗聴用部品が追加されても検出できないことがあります。

そのため、真正性の確認を通過したことだけでは、端末内部に追加部品がないとはいえません。 今回報告された改造例では、正規のSecure Elementを取り外さずに、画面の信号を読み取る回路や通信部品を加える手法が説明されています。 正規品かどうかの検証と、物理的な改造の有無は、確認する対象が異なります。

リカバリーフレーズを新しくする理由

リカバリーフレーズは、端末を紛失した場合などにウォレットへのアクセスを復元するための秘密情報です。 改造端末が画面に表示されるフレーズを読み取った場合、攻撃者は端末そのものを持ち去らなくても、同じウォレットへアクセスできる可能性があります。

端末を初期化したり別の端末に交換したりしても、すでに知られたフレーズ自体は変わりません。 そのフレーズを新しい端末で使い続ければ、端末を替えた後も資産へのアクセスを許すおそれがあります。

Ledgerは、設定済みの端末を使っていた利用者に、新しいリカバリーフレーズを作成したウォレットへの資産移動を勧めています。 新しいフレーズを使うことで、漏えいした可能性のある旧フレーズとは別の秘密情報でウォレットを管理できます。