NASAのSkyFall、3機の火星ヘリで地下氷と地形を調査へ
出典: science.nasa.gov

SkyFall計画では、火星に3機のヘリコプターを送り、地表の地形や地下の氷を調べます。打ち上げは2028年後半、火星への着陸は2030年秋の予定です。探査車を中継に使わず、ヘリが個別に飛行・着陸する構想で、火星の広い範囲を上空から調べます。

SkyFall mission artist's concept images
出典: science.nasa.gov

3機を火星へ運ぶSkyFall計画

SkyFallの3機は、原子力電気推進を実証する宇宙船「Space Reactor-1 Freedom(SR-1 Freedom)」で火星へ運ばれます。宇宙船は火星大気中でSkyFallを放出し、降下中にヘリを展開する計画です。3機はそれぞれ自力で着陸する設計です。

火星大気中で機体を放出する降下方式は「SkyFall maneuver」と呼ばれます。この方式では着陸機を別に用意せず、ヘリ自身が飛行して着地します。着陸地点は決まっておらず、科学的な価値と着陸システムの条件を踏まえて候補地を検討する予定です。

火星の春に北半球へ到着する計画です。火星の砂嵐を避ける時期に合わせています。

レーダーとカメラで地下・地表を調べる

各機は地中探査レーダー(GPR)を搭載し、火星の地表近くにある層を調べます。探査深度は通常約0.5〜3メートルで、条件が良ければさらに深い範囲も対象になります。レーダーの反射から、地下の岩石、塵、氷などの層を調べる計画です。

GPRは電波を地下へ送り、地層などの境界から戻る反射を記録します。2003年の火星探査用レーダーの実験では、地中の電気的性質の違いを約1メートルの分解能で捉えました。一方、反射だけでは境界の地質学的な意味を特定しにくく、解釈には地質情報や数値シミュレーションが役立つと報告されています。

火星探査車パーサビアランスのRIMFAXも、走行中に地下へ電波を送り、反射を記録して地下の画像や物質特性を調べています。RIMFAXのデータに現れた双曲線状のパターンは、地下5メートルまでの岩塊や空洞などに由来すると考えられています。RIMFAXでは、反射波の伝わる速さから誘電率や岩石密度を推定し、地下物質の手掛かりにしました。

カメラと気象観測で着陸候補地を評価

SkyFallには可視光カメラと近赤外カメラも搭載されます。可視光画像を重ねて地形の3Dマップを作り、近赤外の観測で地表の岩石や塵の組成を調べる計画です。地表と地下のデータを組み合わせ、将来の着陸候補地を評価します。

機体には気温センサーと放射線モニターも搭載されます。飛行中の複数の高度で風速と風向を測り、画像と合わせて火星の風や塵の移動を調べます。地下に氷が見つかった場合は、その広がりや深さを把握し、火星の気候史を理解する手掛かりにする計画です。

1回の飛行は約2分半で、1機あたり約1〜2キロメートルの地表を調査する想定です。可視光・近赤外カメラとレーダーで地表・地下の地図を作り、軌道上からの観測より細かな地形情報を得る構想です。着陸地点と周辺の候補地を検討するワークショップは、2027年後半にも予定されています。

Ingenuityの飛行実績を次の機体へ

SkyFallは、火星で動力飛行を実証したNASAの小型ヘリ「Ingenuity」の経験を引き継ぎます。Ingenuityは当初、5回の試験飛行を想定していましたが、2021年4月の初飛行から計72回飛行し、2024年1月に最後の飛行を終えました。最後はローターブレードの損傷で飛行できなくなりました。

Ingenuityは飛行時間の合計128.8分、飛行距離10.5マイル(17キロメートル)、高度最大78.7フィート(24メートル)を記録しました。設計上の試験飛行を終えた後は、パーサビアランスのための空中偵察も担いました。火星の薄い大気で飛行を実証した経験は、SkyFallなど次世代機につながります。

終盤の飛行試験では、速く着陸してエネルギーを節約する方法と、遅く着陸して着地時の負荷を減らす方法が試されました。NASAのIngenuity主任技師トラビス・ブラウンは、こうしたデータが将来のローター機設計に役立つと述べています。SkyFallの3機はIngenuityより大型で、同じ運用経験を生かしながら、レーダーなど5つの科学機器を搭載する計画です。