Black Sea Nasa May 25 2004
写真: Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team, NASA/GSFC / Public domain / Wikimedia Commons

NATOは黒海で相次ぐドローン攻撃を受け、海上哨戒機やレーダー、情報要員などを追加派遣する方針を示しました。商船への攻撃が続くなか、同盟国はセンサーと情報共有を増やし、地域の状況把握を強化します。

NATOが哨戒機やレーダーを追加

NATOの報道官マーティン・オドネル大佐は、同盟国が海上哨戒機、レーダーシステム、爆発物の分析チーム、情報要員、ドローンなどを黒海に追加すると述べました。派遣済みのものと、今後派遣するものの両方が含まれます。

オドネル大佐は、センサーの増強とデータ共有を通じて地域の状況把握を高めることが最も重要だと説明しました。NATOの意思決定機関である北大西洋理事会は、ブリュッセルの本部で黒海の安全保障を協議しました。

NATOのアリソン・ハート報道官は、それ以前に、東側の防衛態勢をすでに強化し、対ドローン能力も含めていると発信していました。今回の追加派遣は、黒海周辺での監視や情報収集を広げる措置です。

商船への攻撃で乗組員の死者・行方不明者

攻撃の発生場所は、ウクライナの穀物輸出にも使われる黒海の航路周辺です。10月5日には、ルーマニアが自国の黒海水域で船が炎上・沈没し、2人が死亡したと報告しました。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアに責任があると非難しました。

その前の週には、ルーマニア沖で化学タンカー2隻がドローン攻撃を受けて炎上し、船員7人が行方不明と報じられました。さらに直前の10日間には、ルーマニアとNATO加盟国ブルガリアの沿岸付近で少なくとも5隻の貨物船が攻撃を受け、船員少なくとも23人が死亡または行方不明になりました。

欧州連合(EU)のカヤ・カラス外交安全保障上級代表は、ロシアのものと疑われるドローンによる10日間で6回の攻撃を「危険で受け入れられないエスカレーション」と表現しました。攻撃について、NATOやブルガリア、ルーマニアは特定の国に直接責任を帰していません。ロシア政府は関与を認めておらず、軍事アナリストはロシアが攻撃を実行した可能性が極めて高いと述べています。

モントルー条約が軍艦の通航を制限

黒海への軍艦の出入りには、1936年に締結されたモントルー条約が関わります。トルコ海峡を通る軍艦の種類や数、黒海に滞在できる期間などを定めた条約で、トルコは戦時または侵略の脅威がある場合、軍事目的の通航を閉ざす権限を持ちます。

非沿岸国の軍艦は黒海での滞在が21日までに限られ、非沿岸国が派遣できる艦艇にも排水量の上限があります。条約はNATOの海軍支援を制約する要因の一つで、NATOの第2常設海上部隊(SNMG2)の黒海での艦艇数にも関係しています。

今回NATOが挙げた追加措置には哨戒機、レーダー、情報要員などが含まれます。条約が定める軍艦の通航・滞在制限と、今回発表された監視・情報収集の措置は、それぞれ異なる形で黒海の安全保障に関わります。

航路の混乱は穀物輸出にも影響

黒海の海上輸送は、ウクライナの農産物を国際市場へ運ぶ主要な経路です。EUの外交部門である欧州対外行動庁(EEAS)は、2026年8月のウクライナの穀物輸出が前年同月比で50%減少したとしています。

EEASは、攻撃が港湾や輸送インフラにも及び、黒海やドナウ川、陸路を通じた輸出を妨げていると説明しました。また、2026年11月までに穀物、油糧種子、加工品の900万トン超が、十分な保管場所を確保できない可能性があると見積もっています。

EUは2022年5月以降、黒海以外の輸出経路となる「連帯レーン」を運用し、貯蔵施設や国境を越える輸送への支援も進めています。EEASは、こうした代替策だけでは、ウクライナの農産物輸出の大半を扱う黒海での安全な航行を置き換えられないとしています。