
塗布・乾燥で異種材料を接合
物質・材料研究機構(NIMS)は、溶液を塗って乾燥させるだけで形成できる多孔質層を使い、性質の異なる材料を接合する技術を開発しました。ガラスとの接着が難しい柔軟なポリマーを使った実験では、接合強度が7メガパスカル(MPa)を超えました。
この層は「プリンタブル・ポーラス・アンカー(PPA)」と呼ばれ、ナノメートルからマイクロメートルの大きさの孔が網目状につながっています。ガラス側には化学的な親和性で接着し、ポリマー側は材料を孔に入り込ませて固定します。
実験では、材料の間にPPAを挟むことで、垂直方向の引張強度が約2倍になりました。この方法では、接着剤と両側の材料との相性だけに頼らず、層の構造を使って接合します。
相分離が孔の形をつくる
PPAの形成には「粘弾性相分離」が使われています。これは、溶液中の成分が分かれる過程で、ポリマーを多く含む部分が弾性を持ち、構造の形成に影響する現象です。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜の形成を調べた研究では、溶液に残った微細な結晶が一時的な結合点となり、溶液の粘弾性を高めて弾性的な相分離を促す例が報告されています。結晶が溶ける条件では粘弾性の制約が弱まり、流動的な相分離が進みました。
このPVDF研究は膜の形成を扱っており、PPAと同じ材料や条件を調べたものではありません。一方、相分離の条件がポリマーの構造や孔の形に関わる点は、塗布・乾燥で多孔質層を作るPPAの仕組みを理解する手がかりになります。
従来の接合では材料ごとの調整が必要
異なる材料を組み合わせる構造では、従来、組み合わせごとに適合する接着剤を設計する必要がありました。表面を機械的に削ったり化学処理したりして接着力を高める方法もありますが、加工工程が複雑になり、エネルギー消費や処理残渣が課題になります。
歯科用セラミックと樹脂セメントを調べた実験では、接着力を高める表面処理の効果が材料によって異なりました。ガラス系セラミックではフッ化水素酸による処理、樹脂ナノセラミックではアルミナによるサンドブラストが、それぞれ高い接着強度を示しました。
同じ実験では、自己エッチング型プライマーが樹脂ナノセラミックを除く材料の接着強度を高めましたが、どの材料でも最高値にはなりませんでした。材料に応じて処理を選ぶ必要がある例です。
ポリマー表面へのコーティングでは、接着に機械的なかみ合わせと化学的な相互作用が関わります。プライマーで表面の性質を調整する方法や、プラズマ処理で濡れやすさを変える方法もあります。
表面が濡れやすくなっても、常に接着力が増すとは限りません。ポリマー表面の性質が時間とともに変化することや、弱く結合した分子の層ができることも、接着力に影響します。
導電性と耐熱性の向上を目指す
PPAは、両側の材料に合わせた接着剤を個別に開発する方法に代わり、幅広い組み合わせに対応する基盤となる可能性があります。現時点で示された接合強度は、ガラスへの接着が難しい柔軟なポリマーを用いた実験の結果です。
NIMSは適用範囲を広げるため、接合界面で熱を逃がし、電気を通す導電性の付与と、厳しい環境に耐える耐熱材料の利用を進めています。いずれも多孔質アンカー層を改良する取り組みです。
研究成果は2026年9月10日に学術誌「Small」でオンライン公開されました。NIMSは、複数材料を組み合わせる次世代モビリティ、ウェアラブル機器、ソフトロボットなどで製造設計の選択肢を広げる技術として、開発を進めています。









