
Preferred Networks(PFN)と米Tenstorrentの共同研究が、NEDOの先端半導体開発事業に採択されました。両社は光電融合と先端パッケージングを使い、生成AIの学習と推論を高性能かつ高効率に実行するプロセッサーのシステム化を目指します。研究開発は2031年度まで続き、終了後は成果の事業化を目指す計画です。
NEDO事業で進める共同研究
採択されたテーマは「光電融合技術を実装したxPU設計開発」です。xPUは、CPUやAI処理向けのプロセッサーなどを含む呼称です。この研究は、NEDOが実施する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の先端半導体製造技術の開発に位置づけられています。
PFNとTenstorrentは、光電融合と先端パッケージングを用いたAIプロセッサーのシステム化技術を共同開発します。PFNは、最先端プロセスを応用した3次元メモリ実装により、メモリー帯域の広いAIチップレットを開発します。
Tenstorrentは、オープンアーキテクチャを基礎に、機密計算に対応するCPUチップレットを開発します。東京大学、神戸大学、東洋大学などは、AI for ScienceやフィジカルAI向けの領域特化型アプリケーションの研究開発で連携する予定です。
光電融合で短くする電気配線
光電融合は、電気信号と光信号を組み合わせてデータを伝送する技術です。CPO(Co-Packaged Optics)はその一種で、プロセッサーの近くに電気・光の変換機能を置きます。これにより、プロセッサーと変換機能の間の電気配線を短くできます。
従来は、電気と光を変換する光トランシーバーを回路基板の端に置く方式が使われてきました。CPOでは、光信号の生成・制御機能を持つ光エンジンをプロセッサーと同じパッケージに集積し、パッケージ上で信号を変換します。三井物産戦略研究所は、レポートで、電気信号の伝送距離が数十センチから数センチ程度に縮まり、消費電力を従来方式の3分の1以下にできるとしています。
三井物産戦略研究所は、パッケージから光ファイバーを直接取り出すことで実装密度を高め、データ伝送容量を増やせる点も利点に挙げています。プロセッサーと光エンジンの距離が短くなると、複雑な信号処理を簡素化または省略でき、伝送遅延を数十から百ナノ秒規模で短縮できる可能性があります。
AI処理の通信効率をめぐる技術
データセンターでは、ラック間通信に銅の電気配線が多く使われています。IBMの研究者は、光パッケージング技術の試作モジュールを紹介し、データセンター内の通信帯域を広げる可能性を示しました。IBMは論文で、光波長多重通信との組み合わせにより、チップ間通信の帯域幅が電気配線と比べ最大80倍になる可能性を示しています。
IBMは、ポリマー光導波路をシリコンフォトニクス導波路に結合する試作を行いました。光導波路は光信号を通す経路で、IBMの試作には高密度の配線構造が使われています。IBMはこの技術について、電気配線より消費電力を抑えながら、AI処理の通信能力を高める可能性があるとしています。
CPOは、光学部品を半導体と同じパッケージに組み込むため、高度な実装技術を要します。三井物産戦略研究所は、熱に弱い光学素子をプロセッサーの近くに配置する際の熱管理と、故障時に個別部品を交換しにくい製造・保守の複雑さを課題に挙げています。
国内の設計・製造基盤を強化
NEDOの事業は、ポスト5Gに必要な情報通信システムや半導体を開発し、先端半導体を国内で製造する技術の確保を目指しています。対象には、ロジック半導体の前工程・後工程の製造技術に加え、システム設計、実装、微細化に関する基盤技術が含まれます。
事業では、先端半導体の設計技術や製造技術の研究に加え、先導研究と人材育成も扱います。NEDOは、産業全体の持続的な発展に向け、実践的なスキルや問題解決能力、市場創出力を持つ人材の育成を事業内容に含めています。
今回の研究では、光を使う通信機能の実装、メモリー帯域の拡大、機密計算に対応するCPU設計を分担して進めます。開発は2031年度まで続き、研究期間終了後はAIエージェントなどでの活用を想定した事業化を目指します。











