
任務準備は前日から始まる
SR-71ブラックバードの搭乗員は、飛行前に与圧服を着用し、酸素を吸入して健康状態を確認しました。高度約24,300メートルを飛ぶ機体では、乗員の身体を保護する準備も任務の一部でした。
準備は少なくとも前日から始まり、搭乗員はシミュレーターで標準的な任務を練習しました。航法や緊急時の操作、故障への対応を確認し、高高度での上昇や巡航に伴う作業負荷も経験しました。
任務計画では、使用する偵察センサーや記録用テープ、飛行ルートを決めました。機体は計画したルートを飛行し、目標地点でセンサーを作動させる予定でした。
与圧服は搭乗前に細かく点検
搭乗員は、宇宙飛行士の装備に似たデビッド・クラーク製の全身与圧服を着用しました。服の層を整え、パラシュート用ハーネス、ブーツ、密閉式ヘルメット、手袋を装着した後、技術者が各部を確認しました。
SR-71の初期搭乗員が使ったS901は、1960年代初頭にA-12、YF-12A、SR-71向けに運用された与圧服でした。その後、改良を経てSR-71用のS1030が1970年代に開発され、1970年に運用が始まりました。
X-15のパイロットには、1950年代に開発され、1958年に運用されたMC-2が使われました。この服は、機内の気圧が失われた場合や緊急脱出時に乗員を保護する設計でした。SR-71ではS901からS1030へと続く機種向けの服が使われており、両機の装備は同一ではありません。
食事と酸素吸入で身体を準備
飛行前の食事は、高タンパクで低残渣の内容でした。搭乗員が着用する服ではトイレ休憩が難しいため、食事は排泄の必要を抑えることも考慮していました。
離陸のおよそ1時間半前に、体温や血圧、全身状態などを確認する健康チェックが行われました。任務によっては尿を回収する器具を使うこともあり、搭乗員はヘルメットの密閉を保ったまま補助食を摂る練習もしていました。
高高度で気圧が下がると、身体に溶けていた窒素が気泡になり、関節痛などを引き起こす減圧症につながることがあります。飛行前に純酸素を吸うと、組織から窒素が排出され、減圧症のリスクを下げられます。米連邦航空局(FAA)は、上昇前30分の酸素吸入を、高度約5,500〜13,100メートルで短時間曝露した場合のリスク低減策として説明しています。
冷却設備を使って機体へ移動
与圧服は重く、動きにくいうえ、地上では内部に熱がこもるため、搭乗員は冷却用ホースを備えた車両で機体へ移動しました。機内に入ってからも、コックピットの空調が機能するまでは冷却支援が必要でした。
搭乗員は通常、予定時刻の50〜55分前に機体へ入り、エンジンは離陸のおよそ40分前に始動しました。それより前から整備員が、乗員の生存装備や客室の与圧、環境制御システムを点検していました。
SR-71は地上で燃料が漏れることがありました。機体は飛行中の熱で膨張するとパネル間の隙間が閉じる設計でした。エンジンやパネルが温まる前の状態から飛行へ移るため、最初の空中給油も通常の離陸手順に含まれていました。










