
AmazonがGPUラックを先行確保
AmazonはAI向けのNvidia製サーバーラックを、設置先のデータセンターが稼働する前に受け取り、倉庫に保管しています。GPUを調達しても、電力や施設が整わなければ稼働できません。AIインフラの拡張には、機器の購入以外にも条件が必要です。
社内メールに記された「Early Rack Receipt」では、AWSは8月だけで約50億ドル(約7,800億円)相当のNvidia GB300ラックを受け取り、以後も毎月約30億ドル(約4,700億円)分を受け取る見込みでした。最終的な設置先の準備が整う前に、供給網の早い段階でサーバーを確保する運用です。
一部の米国施設では、ラックの設置と通電に必要な電力が足りず、完成済みの機器が中間倉庫で待機しています。Amazonの担当チームは、毎月調達するGPUをいつ設置できるか、明確な見通しがないと記していました。
接続待ちからラックへの配電までに時間
大規模データセンターは、近隣の送電網に空き容量がなければ新たに接続できません。送電線や変電所の増設には年単位の時間がかかります。日本の印西・白井エリアでは、新規接続に最長10年以上かかるケースも報告されています。
接続後、施設は高電圧で受電し、変圧器などで電圧を下げてサーバーラックへ配電します。こうした設備の供給にも時間がかかり、大型変圧器のリードタイムは2022年の約100週から、2024年末には128〜144週まで延びました。
ラック単位で必要な電力も増えています。従来のデータセンターでは1ラックあたり5〜10キロワット程度でしたが、GPUラックでは50〜120キロワット、次世代では600キロワットを超えるとされています。接続容量、変電設備、施設内の配電のいずれかが整わなければ、納入済みのGPUを稼働させられません。
電力需要の増加に供給設備が追いつかず
国際エネルギー機関は、世界のデータセンター電力消費が2024年の約415テラワット時から、2030年には約945テラワット時へ増えると見込んでいます。需要の増加と発電・送電設備の整備時期がずれ、データセンター建設が計画どおり進まない状況も生じています。
Goldman Sachs Researchは、米国のデータセンター電力需要が2025年の31ギガワットから2027年に66ギガワットへ増えると予測しています。一方、今後1〜2年に稼働予定の施設容量のうち、予定どおり稼働するのは約50〜60%と見積もっています。
同社は、遅延や計画の中止に加え、サプライチェーンや労働力の不足が稼働時期を左右すると分析しています。建設許可を得てからデータセンターの完成まで、通常18〜24カ月かかるとしています。また、電力網への影響は地域によって異なり、中部大西洋岸、中西部、北西部では供給の信頼性に関するリスクが高いと予測しています。
先行購入がAmazonの資金負担に
ラックを前倒しで受け取ると必要な機器を早めに確保できますが、稼働前の在庫にも資金を投じることになります。Amazonは以前、ラックが完成してデータセンターへ納入された後に所有権を得ていましたが、AI向け設備では供給網の早い段階で数十億ドル規模を支払う運用に変えています。
Amazonの広報担当者は、完成したラックを倉庫に保管する方法を「最善の事業慣行」と説明しました。同社は第2四半期に、2023年以来初めて直近12カ月のフリーキャッシュフローがマイナスとなり、当面はマイナスが続くとの見通しを示しています。設備投資額は今年約2,200億ドル(約34兆円)に達する見込みです。
AWSは、AI推論時代向けのサーバーを早期に確保し、データセンターの完成後に展開する構えです。











