Synapticsの特許侵害指摘を受け、Linux向け「Vino」ドライバーが公開停止
出典: linuxdork.com

Linux向けDisplayLinkドライバー「Vino」が公開停止

Synapticsが特許侵害を指摘し、Linux向けのオープンソースドライバー「Vino」の開発者に差し止め通知を送った後、GitHub上のリポジトリは公開されなくなりました。 Vinoは、近年のDisplayLink機器に対応するため、コミュニティーの開発者がリバースエンジニアリングで作っていた実験的なドライバーです。

Phoronixは、VinoがRustで書かれ、開発の一部にAIを使っていたと伝えています。 Linuxカーネルのメーリングリストに掲載された開発者の返信では、開発者は個人の趣味として取り組んでおり、弁護士を代理人にしていないと説明しました。

開発者は、特許侵害を認めず、権利を留保すると返信しました。 公開停止に至る法的なやり取りの全容は示されていませんが、開発者の返信には、Synaptics側の弁護士から書簡と英国特許2件の写しを受け取ったことが記されています。

開発者は英国特許2件の有効性に異議

開発者が対象として挙げたのはGB2484736とGB2485613です。 返信では、英国知的財産庁の調査報告に先行文献が挙げられていたとし、各特許の出願時の請求項に対する引用件数を、前者は7件、後者は6件と記しました。

開発者の主張では、両特許の独立請求項は、ネットワークや転送方式に関する限定を加えた後に登録されました。 また、USBでコンピューターに追加ディスプレイを接続する方法は以前から知られており、1998年のRFB/VNC仕様などにも関連する技術が記載されていると述べています。

さらに開発者は、圧縮フレームバッファーやHaar符号化タイルに関する先行技術として、1990年代に優先日を持つ米国特許2件を挙げました。 これらは開発者側の反論であり、特許の有効性や侵害の有無について裁判所が判断したことを示すものではありません。

USB経由の映像転送とLinuxの旧ドライバー

DisplayLinkは、ディスプレイの画面をUSB経由で転送する技術です。Linuxカーネルのudlfbドライバーの説明では、USB 2.0世代のDisplayLinkチップは、機器側のフレームバッファーに映像を送り、VGA、DVI、HDMIの画面を駆動します。

転送時には、コンピューター側で画面を描画し、前の画面から変わった部分を特定して圧縮し、USBの一括転送で送ります。 機器側では受け取った変更部分をフレームバッファーに反映するため、画素が変化しない限り、コンピューターから映像データを送り続ける必要はありません。

Linuxのudlfbは、USB 2.0世代のDisplayLinkチップ向けに用意されたカーネルドライバーです。 ドライバーがディスプレイのEDIDを読み取って対応する表示モードを設定し、ユーザー空間のアプリケーションは標準のフレームバッファーインターフェースを通じて画面を扱います。

DisplayLinkドックとDisplayPort Alt Modeの違い

DisplayLink対応ドックは映像をソフトウェアで圧縮してUSBへ送るため、Linuxで機器を動かすには対応ドライバーが必要です。 Linux Dorkの説明では、現行の構成には仮想ディスプレイを提供するオープンソースのカーネルモジュール「evdi」と、圧縮処理や機器との通信を担うプロプライエタリーなユーザー空間デーモンが含まれます。

これに対し、DisplayPort Alt Mode対応のUSB-Cドックは、USB-C端子を通じてDisplayPortの映像信号を運びます。 同資料は、この方式では通常のグラフィックスドライバーを使い、DisplayLink用ドライバーを必要としないと説明しています。

Vinoをめぐる問題は、こうしたUSB経由の映像転送に対応する新しいオープンソースドライバーの開発が、特許侵害の指摘を受けて公開停止に至ったものです。 一方、Linuxカーネルには旧世代のDisplayLink機器向けドライバーudlfbがあり、DisplayLink製品でも世代によってLinuxで使うソフトウェアの構成は異なります。